この熱き人々

2015年1月15日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 以来、アニメから洋画、ゲーム、ラジオのDJ、テレビの司会、舞台、さらに俳優として映画やドラマ出演と、その仕事の幅はどんどん広がっている。山寺の声ばかりか、山寺の存在を求める分野が拡大しているということである。昨年12月に公開された吉本実憂主演の映画「ゆめはるか」では、ヒロインの父親役で出演している。

映画「ゆめはるか」では病気と闘う少女の父親を演じた
©2014「ゆめはるか」製作委員会 配給:ベストブレーン

 「これまではキャラ芝居だったんですが、普通のお父さん役はどうなんだろうとチャレンジしてみたんです。現場は楽しかったんですけど……反省しかないですね。ほかの人がみんな天才に見えるといいますか」

 これまでの軽快な言葉のテンポがちょっと変わる。難病を患った娘をもつ父親は、言葉少なに佇まいで困惑や決断を表現する。しかも、キャラが立ってこそのやまちゃんがどこまでも普通の父親を、最大の武器である声を極限まで封じられて演じた。難しかったという。この挑戦がどんな実を結んで、新しい展開を見せてくれるのか。

 「『サウンドシアター』にも、ぜひ来てほしいなあ。歌舞伎や宝塚や落語界など異なるジャンルの融合、音楽や楽器との融合といった新感覚で繰り広げる朗読劇なんです」

 山寺が立ち上げから参加しているこのプロジェクトは、今やなかなかチケットが手に入らない大変な人気公演になっている。今年4月には声優の先輩と演出家で立ち上げた演劇ユニット「ラフィングライブ」の旗揚げ公演が銀座の博品館劇場で上演される。レイ・クーニーの「パパ、アイ・ラブ・ユー!」は、言葉が飛び交うコメディー。まさに山寺の真骨頂が発揮される世界。月曜から金曜までの早朝テレビ番組を17年間も休むことなく続けながら、声で表現できる可能性を貪欲に広げていく。

 「でも、そのほうが規則正しく生活できてかえって元気になるんです。僕はものすごくだらしない人間で、与えられないと頑張らないタイプなんですよ」

 それは、与えられればとことん頑張るということでもあるのだろう。みんなが次はどんなやまちゃんの声に出会えるかを楽しみにしていて、山寺は声という万能の楽器を駆使して挑戦を続けることで期待に応える。50代になって低い声がさらに出るようになり、高音を維持できればますます声の幅も表現の幅も広がる。山寺はどんどん忙しくなる。忙しさを楽しむように抱負を語る山寺の声は熱を帯び、リズミカルに心を振動させるような響きでダイレクトに気持ちが伝わってくる。誰の声? と迷うことなく、これが山寺の地の声なのだと思えた。そして山寺を確かにつかまえたような……ほっとした感覚も同時に広がっていた。

(写真 / 赤城耕一)

  
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◆「ひととき」2014年12月号より

 

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