2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年1月12日

 これらの国々の現在の体制が、大幅で継続的な油価の下落を生き延びることができるかどうか分からない、と論じています。

出典:Martin Feldstein,‘The Geopolitical Impact of Cheap Oil’(Project Syndicate, November 26, 2014)
http://www.project-syndicate.org/commentary/oil-prices-geopolitical-stability-by-martin-feldstein-2014-11

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 論説の言うように、大幅で継続的な油価の下落が、ロシア、イランやベネズエラの現在の政権の継続を危うくするかどうかは分かりませんが、これらの国が困難な状況に陥っていることは間違いありません。

 ロシアについては、ルーブルが昨年初めから4割下落しています。ルーブルの減価は輸入価格の上昇をもたらし、ロシアのインフレは中央銀行によれば2015年には10%になるとのことです。油価の下落で、2015年の成長率はマイナスになると予想されています。歳入も落ち込み、すでに欧州南東部へのガスパイプラインや、モスクワ・カザン間の高速鉄道の建設が中止されています。

 油価の下落に伴う経済困難に加え、金融危機の恐れも指摘されています。Rosneft、Novatek、VTB銀行やロシア国鉄などの国営企業を中心に、対外債務が7000億ドルほどあるといわれ、欧米の経済制裁で西側の金融機関と取引ができず、対外債務をどうするかという深刻な問題があります。

 プーチンは如何に事態に対処するのでしょうか。12月4日に行われた恒例の国政演説で、プーチンは具体策には触れませんでした。

 このような経済的な危機が、プーチンの外交にどのような影響を及ぼすかについては、欧米に対し柔軟路線を取るとの観測もありますが、むしろ対外的に強硬な姿勢を取って、国民の支持に訴えようとする可能性が考えられるのではないかと思います。

 イランについては、すでに欧米の制裁で経済が困難な状況にあり、それに追い打ちをかける油価の下落は、イラン経済を一層苦境に追いやるでしょう。そのような状況においては、イランが核交渉で従来より柔軟な立場を取る可能性は排除できません。

  
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