所得格差が米外交に与える影響


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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カート・キャンベル元米国務次官補が、2014年11月28日付の米ワシントン・ポスト紙に論説をよせ、米国の増大する所得格差は社会モデルとしての米国の魅力を減ずるのみならず、米国の国際的役割への支持低下につながる、と論じています。

 すなわち、米国での所得格差の国内的影響については多く書かれてきたが、この所得の不平等が世界での米国の役割にどう影響するかはほとんど論じられていない。しかし、この所得格差は、米国の国際的立場や積極性に直接的な影響を与える。

 米国は第2次大戦後の世界システムを作り、動かしてきた。これは米市民が対外責任を自覚し、米国は世界にユニークで価値あるものを提供し得ると信じていたからである。この世代のアメリカ人は負担を担い、アイデアを出す用意があることを示してきた。強い楽観主義が世界での米国の積極性を強めていた。      

 しかし、人口の多くが生活するのに精いっぱいな時には、多くの国民は対外援助や軍事支出を削減できる贅沢と考えがちである。ティー・パーティの孤立主義とウオール街占拠運動の双方の中に、その兆候が見られる。

 外国は長い間、米国を模倣の対象としてきた。高等教育の普及、技術革新、「アメリカン・ドリーム」は多くの国にとり魅力的であった。しかし、今、米国は大変豊かなエリートとそれ以外に分かれた不安定な社会になってきている。米国のソフト・パワーである中産階級の存在が掘り崩されている。

 最近の米国の世界での活動は、中東、南アジアでのほぼ15年にわたる紛争であった。軍事技術の進歩が特徴的で、米国民の1%がこれに関与したが、多くの人は戦いもせず、お金も出さなかった。

 今後の国際問題は、より多くの国民を巻き込むだろう。21世紀の歴史の舞台はアジアである。そこでは技術革新を進める貪欲な中産階級、民族対立、歴史とアイデンティティについての闘争、そして単純な力の追求がある。米国はいまアジアに外交を方向づけようとしている。アジアでの競争は、軍事、経済、教育、インフラなど総合的な国力によって決まる。長期的な投資が必要であるが、所得の格差は対外関与への支持を弱める。

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