2024年4月17日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年1月21日

 アナリストらが見るところでは、汚職で訴追され、名前を確認できる人物の中に「太子党」のメンバーは一人もいないのである、と論じています。

出典:Jamil Anderlini‘Arrest of ‘tiger’ Zhou Yongkang sheds light on China graft purge’(Financial Times, December 8, 2014)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/57042e30-7ebe-11e4-b83e-00144feabdc0.html

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 周永康の訴追決定までには、大方の予想を越えて、かなりの長期の時間を要しました。そのために、習近平が江沢民や胡錦濤の各グループと激しい駆け引き、権力闘争を行ってきたことが容易に想像できます。習近平としては、薄煕来の失脚以降、ようやく周永康の逮捕に漕ぎ着けた、というところでしょう。

 周永康訴追は、本論評の言うように、クリーンな一党独裁を目指す政治改革というより、基本的には政敵を排除するための伝統的な権力闘争であったという見方は的を射たものでしょう。

 習としては、元政治局常務委員の周永康という「虎」を叩くために、同人が如何に権力を濫用し、腐敗堕落していたかを強調する必要があるにちがいありません。一族のみで十数億円の不正蓄財をしていたと報じられています。それらが事実か否かを確認するすべはありませんが、それが、元政治局常務委員を起訴するために必要な理由づけなのでしょう。

 しかし、このことは、当然ながら、中国の一般大衆から見れば、最上級の共産党幹部がこのように腐敗堕落していたことを知ることとなり、権力の正統性にあらためて疑問をもつこととなったにちがいありません。

 習近平体制下の反汚職キャンペーンの結果、共産党幹部の汚職や職権濫用が一時的に少なくなることはあるかもしれません。しかし、摘発の対象がこれまでのように自分たちのグループ(いわゆる「太子党」)の人間を含まず、政敵たちばかりであれば、「虎もハエも叩く」というスローガンも所詮は権力闘争のため、と言われてもやむを得ないでしょう。

 なお、元首相・温家宝の一族は2300億円の不正蓄財を行った、とニューヨーク・タイムズ紙が報道したことがありますが、今日の中国では「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗する」という状況が構造化しつつあるように思われます。

  
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