WEDGE REPORT

2009年7月27日

職員の涙を呼んだ若林洋一前理事長の辞任(仙北信用組合)

 翌朝、若林氏は見送る職員に対し、「信用組合の誇りを忘れず、自分の個性を大事にして、地域のために邁進してほしい」と挨拶。職員たちは、急遽用意した花束を手渡し、室内にはすすり泣く声が響きました。「理事長のような人はいない。残念です」。職員に感想を聞くと異口同音にそう答えました。

 一時、預金量195億円、貸出量146億円まで落ち込んでいた仙北信組は、02年の若林氏の理事長就任を境に反転。09年3月末の段階で預金量318億円、貸出量241億円まで急伸しています。預貸率75%というのは驚くべき数字です。

 しかし、拠点とする宮城県栗原市は、過疎化や景気悪化の波を受けています。収益は悪化し、08年3月末に4694万円の最終赤字に転落しました。

 出資金の増強など自助努力で自己資本比率を5.17%に上げ、自己資本比率規制国内基準の「4%以上」をクリアしましたが、それでも不足とする当局の指摘もあり、「さらなる増強で地域企業をもっと支援できるなら」と、08年9月末に全国信用協同組合連合会(全信組連)から7億2000万円の資本増強を仰ぎました。これが決定打となり、経営責任を問う監督官庁や理事会との間の溝が埋まらず、辞任となりました。

銀行は本来の役割を忘れてしまった

 「貸さないと何も始まらない。いまの銀行は逃げている。貸すという本来の役割を忘れてしまった。いまはどこも地域経済がボロボロ。こんな状況で銀行が黒字だったらむしろおかしい。

 赤字になっても構わないとは言わないが、地域経済のために体力が続くギリギリのところまで地域に資金を還流させることが、地域金融機関に求められている役割のはず。それなのに地銀は数十%の資金を都会にもっていっている。相互扶助の精神で銀行に対するアンチテーゼとして生まれた信金や信組が、踏ん張って地域に資金を回さなければ存在価値を問われる」

 そう語る若林氏が手がけてきたのは、きめ細やかな企業支援であり事業支援です。

 今年6月末、ある建設業者が「6300万円必要」と駆け込んできました。すぐ保証協会にかけあってみると、「すでに1億5000万円保証残高があるので、3000万円は担保をつけてほしい」との返答。若林氏は自らトップ交渉を開始し、その企業の状況を保証協会に丹念に説明し、信組、協会一緒になって応援していく方針を確認。5900万円の保証枠を獲得しました。

 ある企業は日本政策金融公庫(旧・国民生活金融公庫、略称・国金)から合計680万円の融資を受け、毎月20万円を返済していたが資金繰りが悪化。仙北信組が運転資金300万円を融資するが、この返済額月4万円が20万円に上乗せされるのではもちません。そこで国金からの融資を一本にまとめ、返済期間を延長することにしました。 「より金利の安い国金に一本化をお願いしたら、仙北が追い貸しでリスクを取っていることを評価してくれて、応じてくれた。結果合計の返済金額は10万円に収まり、経営危機は脱した」(若林氏)。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る