2024年4月20日(土)

ペコペコ・サラリーマン哲学

2009年7月28日

 同じ小さなことを報道するなら、鳩山民主党代表の献金問題を報道した方がまだ意味があると思いますが、なぜかこちらはあまり報道されません。民主党は、「いまはメディアが自民党よりは甘く接してくれるから、面倒な話題はうやむやにして、ひたすら『政権交代』だけを叫んでいれば大勝できる」と思っているのでしょう。

 こういう状況ばかり見せつけられて、政治もTVもなんか変だなあ、馬鹿馬鹿しいなあ、と思う人は間違いなく増えているに違いありません。私は73歳のいまになって、こんなことを考える知恵をやっと身につけましたが、1993年に自民党が分裂してから15年以上もの間、政治のゴタゴタに付き合わされ続けた国民は、政治を冷静にみる目、知恵をかなり身につけてきていると思います。

政治なんて馬鹿馬鹿しいけど・・・

 しかし、ここで醒めてしまったらおしまいです。

 また、もっともっと長い目線で見ると評価できる点もあります。

 終戦を9歳で迎えた私は、日本の「戦中」「戦後」とともに生きてきた生き証人のような世代の一人ですが、今回の総選挙は、日本にとってはじめての自由な民主主義が試されるときかもしれないのです。

 戦後ずっと日本では、政治家は偉いと思われ、「先生」、「先生」と呼ばれるのでもわかるように、なんとなく権威がある人たちだとされてきました。選挙のときだけはペコペコするけれども、それ以外のときはふんぞり返る、それが政治家でした。国民もそれを許してきました。

 でも「自民党をぶっ潰す」と叫んだ小泉さんは、それまで高級料亭でコソコソやっていた政治を破壊し、ホテルなどで会食して、「政治家の仕事」を白日の下にさらしました。おかげで麻生さんも料亭を使わず、ホテルで飲んで会食をしています。小泉さんの最大の功績がこのディスクローズだと思いますが、おかげで「政治家なんて実はたいした人間ではない、ほとんど、庶民のわれわれと同じである」ということが全国民にわかってしまいました。

 政治家はほんとうに弱くなりました。選挙のときだけではなく、普段から世論調査の数字におびえ、いつも国民にペコペコするようになりました。私は、「人間誰しも自分がいちばんかわいい。自分をかわいがるためには、偉ぶったりせずに、ひたすらペコペコするのがよい」という「ペコペコ哲学」(参考:このコラムの第一回の記事)を推奨していますが、政治家も自分をかわいがるためにはどうすればよいのかがやっとわかったのでしょう。政治家も普段から、「ペコペコ哲学」を実践してくれるようになったのです(私も、国民のことを考えて、清潔な政治をしてくれる、立派な政治家が出てきてくれれば、党派にこだわらず、ペコペコしたいと思います)。

 高校の学費をタダにするなんて政策が出てきたのは政治家の発想ではありません。庶民の発想です。いまは、過半数が大学に進学する一方で、お父さんのリストラで高校にも通えなくなる子どもが大勢出てしまうような、ひどい格差のある時代です。ここで高校をタダにしようというのは良い考えだと思いますが、そういう考え方が出てくることは、いかに政治家が弱くなったかを示しています。


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