Wedge REPORT

2015年1月30日

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安井至 (やすい・いたる)

持続性推進機構理事長、東京大学名誉教授

東京大学大学院工学系研究科博士課程終了後、同生産技術研究所で助手、講師、助教授、教授。同国際産学協同研究センター長を経て58歳で辞職し国際連合大学・副学長。科学技術振興機構、製品評価技術基盤機構理事長を務めた後に現職。

 FCVは、どのようにして作られた水素を搭載するかによって、理想のエコカーにもなり得る一方で、最悪の環境破壊車にもなり得る。理想的、かつ、そのうち現実になると期待される水素は、メガソーラーや風力発電の不安定な電力だけで水素を製造し、圧縮し、そして、供給する水素ステーションで作られたものである。これが可能になれば、EVなみのCO2排出量になる。一方、最悪の水素は、石炭発電の電力で製造された水素で、260グラム/km程度のCO2排出量になり、現状のガソリン車の2倍もの環境負荷になる。その他の水素は、この両者の中間のものになる。

 となると、どのような水素であるかを明示することを義務化することによって、はじめて、理想が達成できることになる。それには、カーボンフットプリントという仕組みがある。商品の一生で排出されるCO2量を表示する仕組みではあるが、この表示を強制すべき最初の商品が水素ということになるのではないだろうか。

 さて、「今、このFCVを買うか」と聞かれたら、まずは、水素ステーションが整備されることが大前提であるので、今すぐということではなさそうである。また、上述のカーボンフットプリントが制度化されることも条件に思える。

 文頭に述べた非常用電源車としてのFCVの機能はかなり魅力的である。個人として所有している車はプリウスPHVであるが、この車を選択した理由の一つが、実は、非常用電源車であった。12年にニューヨーク市を襲ったハリケーン・サンディは大停電をもたらした。その際、プリウスにオプションのAC100V1500W出力を搭載した車は、タンク2/3のガソリンで、1週間電気が使えたという報道があった。

 しかし、将来の環境負荷低減のさらなる向上には期待しているものの、当面供給されるであろう水素は、図に示されているオンサイト都市ガス改質か、オフサイト天然ガス改質によるものになるだろうから、ハイブリッドなどの現行車より決定的に良くはならない。結論としては、「しばらく様子を見る」ということになりそうである。 

  
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◆Wedge2015年1月号より


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