オトナの教養 週末の一冊

2015年1月30日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 普段何気なく使っている「がんばる」という言葉の意味をあらためて考えさせられる本がこのほど出版された。その名も『がんばると迷惑な人』(新潮新書)である。同志社大学で組織論を研究している太田肇教授がこのほど出版した。「成果に結びつく質の高い努力をしよう」という趣旨だが、太田さんが本書に込めた思いを聞いた。

――ユニークなタイトルが目を引きます。本書を書こうと思われたきっかけは何ですか。

『がんばると迷惑な人』(太田肇、新潮社)

太田:日本人は勤勉に働き、労働時間も主要国の中で一番長い。有給休暇は半分も取得しないし、サービス残業もいとわない。このように勤勉に働いているにもかかわらず、生産性は1990年代の後半ごろから急速に低下し、国際競争力も同じように低下しています。利益率も2000年ごろから欧米に水をあけられている。ただ頑張っただけでは報われない時代に入ってきたな、と思います。これまでと同じように、「精いっぱい」、「全力で」といったような言葉をかけているだけでは、人々は疲弊するばかりで生産性は上がりませんし、政府が目標とする女性の活用や少子化対策なども行き詰まってしまいます。大切なことは、とにかくがむしゃらに頑張るというのではなく、いかに努力の質を上げるかということです。それを強調したくて本書をまとめました。

 日本の組織にしても働き方にしても、長い間、工業化社会として成功をとげてきたので、その間に身についたモデルがずっと変わらない。ポスト工業化時代に入って、その無駄な面が表面化してきたにもかかわらず、それにまだ十分気付いていない。そうした点に危機感を感じていました。

――本書では努力すること自体を無駄と言っているわけでありませんね。

太田:子供から大人までどんな世代も目標に向かって努力を重ねることは大切です。私が強調したいのは、努力の「量」を「質」へと変化させるということです。質を考えることなく量だけに集中してきた長年の傾向を見直そうということです

――個人的な反省として、受験勉強などで、成果の上がらない間違った方向に力を入れてきた自分としては、本書を読んで身につまされる思いがします。これまでどうして「努力の質」という点があまり注目されてこなかったのでしょうか。

太田:私はやはり、農業社会や工業化社会における長い間の成功体験があったからだと思います。技術革新によって、ただ単純に頑張ることで成果をあげられる時代は終わったと言えます。

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