2024年4月25日(木)

Wedge REPORT

2015年2月2日

4割の人員削減

 特に深刻なのは、核燃料の製造会社だ。原発が稼働していないということは、燃料の消費もないため、燃料製造会社は、この4年間受注がなく、収益が挙げられない状態にある。原子力発電の原料となる核燃料棒は、国内3社で全原発分を生産している。原料となるウランこそ、電力会社が輸入しているが、それ以後の製造は、すべてその3社が行ってきた。安全性を向上させ、どうやったら熱効率のよい状態に製造できるかという設計など、非常に専門性が高く、高度な技術を要する分野であり、日本の理工学のトップレベルといえる人材によって支えられてきた。それが、震災以降、約4割の人員削減を強いられ、親会社への出向や支援、また廃炉に関わる研究などを行いながら、そう遠くないであろう再稼働とそれに伴う燃料の受注に向け、会社をなんとか存続させているのである。

 さらに、燃料は通常、電力会社が1~2年分の備蓄を抱えているため、再稼働してもすぐには収益につながらない。製造工程に、1年から2年の時間を要するという事情もある。今年、原子力規制委員会の安全審査に合格する原発がいくつか出てきても、そこから地元の合意などのその後のプロセスを経て、再稼働時期が明確になり、やっとそこで数年先の経営上の見通しが立てられるようになるのである。

 「原子力発電の位置づけも明確ではない現状では、経営計画を立てることも困難です。国の責務は、安全保障という観点から、原子力の位置づけも含め、エネルギー政策を明確にすることだと思っています」(前出、幹部)。

 原子力発電所の安全対策を、震災前に比べて厳しく、徹底して行うことに、誰も異論はない。しかし、だからといっていつまでもエネルギー政策を明確にしないのはおかしい。

 そもそも、原子力発電は、戦後の復興と経済発展、そして安全保障面において、その優位性を国が尊重し、推進してきた。環境負荷の小さいエネルギーとしても役割は大きい。日本の原子力産業も、唯一の被爆国であるからこそ、その安全性には厳しい基準が設けられ、その技術革新には50年以上の歴史がある。

 しかし、全原発停止、さらに原発再稼働の時期が見込めず、エネルギー政策における原子力の位置づけが不明な状態が長引けば長引くほど、積み上げてきた技術の継承と人材の育成や向上に、取り返しのつかない問題を生じかねない。ひいては、それが国の存亡にもかかわる問題に発展しないとも言い切れない。いざ、再稼働となった時に、燃料を自給自足できないのでは、元も子もない。「原発を動かさなくたって何とかなっている」などというのは、間違った認識であることに、政治家はもちろん、国民にも気づいてもらいたい。

  
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