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2015年2月5日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 後藤健二さんと湯川遥菜さんという二人の日本人がISIL(「イスラム国」とも呼称)メンバーに殺害されたとされる映像が公開されて日本社会に大きな衝撃を与えた。中東でのテロに日本が「巻き込まれる」可能性が高まったと捉えられたためだ。しかし、日本人が「巻き込まれ」、人質になったのはもちろん初めてでもなければ、最後でもない。むしろ過激派の跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)は私たちの周辺のアジア諸国で顕著になっているように見える。

 国内に多くのイスラム教徒を抱え、少数民族による騒擾事件や分離独立への動きに常に晒されてきた中国では長年にわたり日本と比較にならないぐらいの緊張を強いられてきた。そんな中国においてさえもここ数年でテロを巡る治安維持の問題ではこれまでと異なる様相を呈している。

 もともと少数民族が多い新疆ウイグル自治区やチベット自治区、そして中国各地に点在する民族自治州では度々、少数民族による騒擾事件が発生していた。しかし、常に分離独立やテロのような暴力事件と隣り合わせの中国でも最近は海外の過激な集団に触発される形で変化が起きている。これまで少数民族地域に限定されていた暴力を伴う騒擾事件が、ここ数年は中国全土に飛び火し、通り魔や爆弾テロが立て続けに起きている。東南アジアのイスラム教へ抜ける国境地域では集団での秘密裏に出国を試みる一団と国境警備隊の間で銃撃戦も頻発している。天安門での車両突入・炎上や山西省庁舎へのテロ未遂、昆明駅での集団通り魔と、暴力事件は場所を選ばず起きるようになっている。

 そこで今回、中国国内の少数民族問題が「イスラム過激派」とどのように繋がり、それが中国社会の治安にもたらしている影響を紹介したい。これまで中国当局が懸念を示してきた「外部勢力」と少数民族の繋がりが、中国国内での全体的な治安維持に影響を与え始めているのだ。

ISILに行った中国人は300人超

 こうした一連の変化は中国の公安次官とマレーシアの内相との会談内容が明かされたことからも窺える。『環球時報』(2015年1月23日付)はマレーシア内相が中国の公安次官の話として300人を超える中国人が既にISILに入ったと伝えた。1月21日にマレーシアを訪問した中国公安部の孟宏偉次官が同国のザシード内務相との会談で明らかにした。この数字にマレーシアは驚いたが、それ以上にマレーシアが既に中国人がISILへ入る中継点としてひとつの重要な拠点になっていることを示したのである。中国からタイやベトナムを抜け、マレーシアやインドネシアからトルコに渡り、そこからシリアに入るというルートが確立されているというわけだ。

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