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2015年2月20日

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伊藤さゆり (いとう・さゆり)

ニッセイ基礎研究所経済研究部 上席研究員

1987年早稲田大学政治経済学部卒業。同年、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行、調査部シニアエコノミストを経て、2001年ニッセイ基礎研究所に入社。13年から現職。

欧州で反緊縮、反EUの動きが広がっている。南欧は「緊縮疲れ」、「改革疲れ」に陥り、一方のドイツでは「支援疲れ」に陥っている。デフレ懸念、域内格差に歯止めをかけることはできるのか。欧州では緊張が高まっている─。

勢いづくギリシャのチプラス新首相 (GETTYIMAGES)

 1月25日のギリシャ総選挙は、政府債務の削減、緊縮財政路線の修正を唱えた「急進左派連合(SYRIZA)」の勝利に終わった。ギリシャは、2月末にEU・国際通貨基金(IMF)による支援プログラムの期限を迎える。総選挙前、新政権は発足後直ちに支援プログラムの最終審査を終えて、予防的な支援プログラムに移行することが内定していた。

 しかし、SYRIZA党首のチプラス首相率いる新政権は、EU、IMF、欧州中央銀行(ECB)のいわゆるトロイカによる政策への監視を嫌い、支援プログラムを早期に離脱、債務交換を通じて過大な債務の元利払いの負担を軽減し、国内銀行などを主な引き受け手とする短期国債で当面の資金繰りをつなぐ道を模索する。

 ECBがギリシャ国債を担保にギリシャの銀行に資金供給を継続してきたのは、トロイカの監視下で支援条件である財政緊縮や構造改革に取り組むことが前提だった。新政権が支援プログラムの早期離脱の方針を曲げなければ、債務不履行とユーロ離脱に発展しかねないとの不安から、預金が流出し始めている。

 今年は1月のギリシャに続き、秋にポルトガル、年末にスペインが総選挙を行う。これら3カ国は財政危機に見舞われ、厳しい財政緊縮と構造改革を迫られた。景気は14年には持ち直し始め、失業率もピーク・アウトした。

 とは言え、生産活動の水準は最も大きく落ち込んだギリシャの場合、世界金融危機前のピークを2割以上下回る。今もギリシャ、スペインでは、4人に1人が失業している。「緊縮疲れ・改革疲れ」はギリシャだけでなく、スペインの総選挙ではギリシャ同様に緊縮策の見直しを掲げる新党・PODEMOSが台風の目となるだろう。

 ユーロ圏で長期不況に陥っているのは、財政危機に直撃された南欧の周辺国だけではない。イタリアでは景気の後退が止まらず、失業率は、世界金融危機前のボトムの5%台から、14年末には13.4%に達し、99年1月のユーロ導入以来の最悪の水準を更新中だ。

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