2024年4月25日(木)

Wedge REPORT

2015年3月9日

高性能な「夢の船」、捕鯨への影響は…

 宝くじ団体は、毎年、南極海で繰り広げられ、日本側に負傷者が出ている「捕鯨戦争」を後ろ盾する世界最大の後援組織だった。ワトソン容疑者が国際指名手配されても、米国の裁判で「SSは海賊」と認定されようとお構いなしで、これまでSSに対する評価を変えないで来た。

 それには日本側の事情も関係している。日本政府の担当省庁を取材する限り、日本側は8年前からSSを支えるこの宝くじ団体に正式な抗議をした形跡が見当たらない。今回も駐オランダ日本大使館から寄付金決定の経緯について、直接の折衝はしていないようである。日本側からの抗議や事情説明がなかったからこそ、10億円以上にもなる高額資金を提供するにあたっても何の障害はないと宝くじ団体が判断した可能性があることは否めないだろう。

シー・シェパード公式サイトに掲載された「夢の船」画像 http://www.seashepherdglobal.org/news-and-commentary/news/sea-shepherd-receives-8-3-million-euros-from-the-dutch-postcode-lottery.html
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 永田町・霞ヶ関の水産関係者がこの決定に露骨に嫌悪感を示したのは無理もなかった。SSはすぐさま、この資金を元に「ドリームシップ」、つまり日本のどの捕鯨船よりも性能が優れた高速船を購入する計画があることを打ち明けたのである。

 コーネリーゼンは表彰式で「われわれが所有している船舶は老朽化し、航行能力も劣る。しかし、シー・シェパードはいまや特注設計の船を建造することができるようになったのだ」と語った。

 オランダの造船会社と検討している夢の船の青写真や海洋を航行するイメージ動画も公式サイトで発表された。先進国の海上保安庁が警備船として保有しているような船のデザインで、船尾にヘリコプターを収納することができる上、高性能な通信機能も装備されている。

 日本は昨年、オーストラリアが提訴した国際司法裁判所(ICJ)の捕鯨裁判で敗訴した。判決は、SSが苛烈な捕鯨妨害したゆえ計画通り調査活動ができなかったことが色濃く反映されていると一部で指摘されている。

 日本は今年、新たな調査捕鯨計画を打ち立て、再び、船団を南極海に送ろうとしている。船団の中で、クジラを解体する役割を担う母船の日新丸は最も足が遅い。これまでも、SS側に日新丸が発見されれば調査活動全体が滞ってしまう事態が起きていた。すでに力をつけたSSは4隻ほどの妨害船を南極海に派遣しており、さらにそれ以上に高性能の船が加われば、日本船団は危険を回避するため、もう逃げ回るしか手段がなくなってしまう。


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