世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年3月16日

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 習近平総書記の力を以ってしても、人民解放軍(PLA)の体質を変えるのは容易ではなく、まして、軍の近代化はさらに困難であろう、と2月14-20日号の英エコノミスト誌が報じています。

 すなわち、習主席が進める反腐敗運動がPLAの中核にまで迫り、PLAは、15人の将軍らが取調べ中ないし拘留中であるという前代未聞の公表をした。

 習が軍の腐敗撲滅に力を入れるのは、一つには、共産党支配の防壁としてのPLAを維持するためである。習は、党の軍に対する「絶対優位」を強調する。

 習の目的は、汚職撲滅によって、この「戦争に勝つ能力」と「党への服従」の両方を促進し、PLAを緊急展開可能な効率的な軍にすることにある。

 PLAの腐敗は以前から問題になっていた。1990年代にPLAが商業活動に進出し、中国全土にホテル、金融機関、ナイトクラブ等、2~3万ものPLA傘下の企業が誕生、これが腐敗の温床になった。

 特に酷いのは、兵站、武器調達、政治事項に関わる部門で、中でも住宅部門では、兵士用の手頃な住宅が建設される代わりに、贅沢な別荘が建てられ、軍幹部に売られる等、不正が横行してきた。

 PLAは、今後、任命審査を厳しくし、採用責任者の秘密査察を行って賄賂を根絶すると言っている。また、将校の住宅は一つに制限されることになり、防衛関連の契約には民間企業も入札できることになった。

 習は軍に対して強い力を持っており、前任者たちよりはPLAの汚職抑制に成功する可能性は高い。習は大学を出てすぐに国防相の個人秘書になっており、父親は独立運動を戦ったゲリラ戦士で、毛沢東に近かった。中国の政治ではこうしたコネは強力な力を発揮する。

 しかし、習の強大な力を以ってしても、PLAのような硬直化した秘密主義の組織を変えるのは容易ではないだろう。検挙された将軍たちは厳罰に処されるだろうが、PLAは違法行為者に対して甘い体質がある。

 PLAの戦闘能力の向上となるとさらに難しい。PLAは20年にわたる国防費の二桁増のおかげで先端兵器を装備するようにはなったが、それらを使いこなす能力が備わったわけではなく、腐敗が根絶されたとしても、PLAは近代化には苦労するだろう、と報じています。

出典:Economist ’Rank and vile’(February 14-20, 2015, p.24-25) 
http://www.economist.com/news/china/21643225-xi-jinping-flexes-his-muscle-against-army-corruption-rank-and-vile

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 上記解説記事は、比較的バランスよく分析されており、全体の流れはその通りなのだと思います。しかし、いくつかの点では、まだ分析が足りないところがあるようです。

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