いま、なぜ武士道なのか

2009年8月15日

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 「人生は理屈ではない」と、人はよくいいます。たしかにその通りかもしれません。それでは「人生とは何か」とお聞きします。おそらく答えに窮することでしょう。人生とはそれほど不可思議で定義のしようもないものです。

 このように、『葉隠』は、組織のなかでの心がけを記した書なのです。上に触れた酒席でのふるまいに留まらず、上司や部下に対する人心把握の要諦、リーダーとしての心構え、自己啓発としての読書の必要を説くなど、江戸時代に書かれたものであるにも拘わらず、その内容は、現代のビジネスパーソンにとって非常に有益なものばかりです。

 現代、仕事盛りのビジネスパーソンたちは、世の中を見るに忙しく、時間が足りません。あれも見たい、これも聞きたいで、時間が超特急で過ぎてゆきます。さらにあちこちにぶつかり挫折したり、とん挫したりもします。その中からいろいろ学び、這い上がっていくのです。ところが這い上がれない者もいます。

 7月28日付の新聞を見ると、今年の1月から6月までの自殺者が1万7000人を超えたと載っています。これだと年間最悪の3万4000人になるといいます。毎年一つの市が消えてなくなることになります。そのうち男性が1万2000人、女性が4800人となっています。なぜ男性のほうがこれほど多いのでしょうか。女性のほうがたくましいのでしょうか。不況がその原因だと書いてありますが、ほんとうでしょうか。仕事がなく、お金もなく、希望もなくなれば死にたくなります。自分ひとりだけのことを考えれば「死」で問題は解決するのかもしれません。残された家族や友人・知人のことを考えればどうなるのでしょうか。

 これほど多くの人が自ら命を絶ちます。政治が、社会が悪いのでしょうか。どうしたらこういう悲惨をなくすことができるでしょうか。失業から自殺へという道筋は少し短絡的なように感じます。その中間に希望というクッションがあるような気がします。人が生きていくのに必要な絶対的条件はなんでしょうか。家も土地も、お金も仕事も大事には違いありません。しかし、それ以上の大切なものがあるのではないでしょうか。

生きる希望を与えてくれる『葉隠』

 こういう時いつも思い出すのはユダヤの民とその歴史です。祖国を追われ流浪すること2000年という歴史は多くの示唆を与えてくれます。ローマでは焼き討ちされ、ナチスではホロコーストに遭い、言葉には言い尽くせない悲劇が連続します。家、土地、金、国家まで奪われても失わなかったものがあります。それは「希望」というダビデの星です。これを思うときいつも私は力がわいてきます。自分の悲運は小さいと思うのです。希望とはそれほど大きな力があり、人が生きていく上でなくてはならないものではないでしょうか。

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