2024年4月24日(水)

Wedge REPORT

2015年3月20日

今回の改革では排除されぬ全中の影響力

 全中監査を強制監査ではなくしたことで、全国団体の統制は幾分弱まる。しかし、全中の政治力は、依然として排除されない。全中は系統農協などから80億円、都道府県の中央会が徴収するものをいれると300億円超の賦課金を、徴収してきた。

 手つかずの都道府県の中央会は、依然として強制的に賦課金を徴収できる。都道府県の中央会は全中の会員なので、都道府県の中央会が集めた賦課金は従来通り、全中に流れて行く。

 全農を中心とした農協は、肥料で8割のシェアをもつ巨大な企業体なのに、協同組合という理由で、独禁法が適用されない。法人税も安いし、固定資産税も免除される。メリットが大きいのに、全農等が株式会社化することはない。

 准組合員の組合利用を、正組合員の2分の1とするという提案は、見せ球だった。准組合員がいなくなれば、地域農協は融資先に困ってしまう。准組合員が維持できるのであれば、全中監査などどうでもよいという判断になったのだろう。

 しかし、准組合員の方が多い「農業」協同組合というのは異常だ。今のJA農協の農業部門は解散させ、銀行・保険事業や生活資材供給を行う地域協同組合とすべきだ。必要があれば、主業農家が自主的に農協を設立するだろう。それが本来の協同組合である。

 また、主業農家も零細な農家も、同じく一票の決定権を持つため、農業をやっているとはいえない多数の零細農家の意見が、農協の意思決定に反映されてしまう一人一票制の改革やJAの地域協同組合化など、本質的な部分はまだ提案もされていない。これで、農協改革を終わらせてはならない。

 農林水産省、農協、農林族議員間に、これまでも争いはあったが、表面化したことはなかった。しかし、今回農協は、農林水産省の変節を激しく指摘する等、農林水産省と全面対決している。農協改革が期待する成果を上げなかったとしても、これに大きな亀裂を生じさせたことの意義は少なくない。

  
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