エネルギー問題を考える

2015年3月20日

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杉山大志 (すぎやま・たいし)

IPCC第5次評価第3部会報告書 統括執筆責任者

1991年東京大学理学部物理学科卒業。93年東京大学大学院工学研究科物理工学修士了、(一財)電力中央研究所入所。国際応用システム解析研究所(IIASA)研究員、国際学術会議科学執行委員、京都議定書CDM理事会パネル委員、産業構造審議会専門委員、IPCC第四次評価第三部会及び統合報告書主著者を経て、現職。(一財)電力中央研究所上席研究員。

 これには政治的な意図も絡んでいる。政治は将来のコストと引き替えに目先の得点を増やしたがるものである。だから、仮に長きにわたりエネルギー政策を損なうことになることが分かっていても、CO2目標を無理に深掘りしようという動機は強い。だが、これは単に国内政治的な得点稼ぎであって、国益にも地球環境益にもならない。「野心的な数値目標を言わないと国際的に孤立して国益を損なう」というのは嘘である。

 かつて鳩山首相は25%削減を宣言したが、それで良いことは何も無かった。これを石原環境大臣が3.8%削減という控えめな数字に修正したが、それで日本が国際的に孤立したわけでもない。また「数値目標を深掘りしないと地球環境が破壊される」というのも間違いである: 地球温暖化には一定のリスクはあるが、かなり誇張されている(「温暖化の悪影響は本当か? 危機感煽るIPCCの環境影響評価 不十分な科学的根拠」参照)。

 もちろん、CO2は減らしたほうがよいが、それは長期的・世界的に見ての話であって、2030年の日本のCO2に直結はしない。2030年の日本について言えば、新しい技術を生み出すほうが、よほど価値がある。

 振り返ってみれば、政治的に膨れあがった過大な再エネ目標が、FIT制度を招き、今日の混乱をもたらした。いま、省エネについても、同じ事が起きようとしている。今後のエネルギーミックスの議論においては、「原子力」「再エネ」に注目するだけではなく、「省エネ比率」についても精査し、抜本的に見直すべきである。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ondanka/kaisai/dai27/gijiyousi.pdf http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2003D_Q3A121C1PP8000/ など参照

参考リンク
本稿で使用した政府資料については:
長期エネルギー需給見通し小委員会(第三回 2月27日、第四回 3月10日)
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/#mitoshi
本稿を裏付けるデータについて詳しくは、下記およびそのリンクを参照されたい:
過大な省エネ見通しはこう見直すべし-政府長期エネルギー需給見通し小委員会で提示された省エネ見通しの改善提案-
http://ieei.or.jp/2015/03/sugiyama150305/

  
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