2024年4月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年3月23日

 韓国は、中国の国防戦略と米のアジア・リバランス政策の間の楔を成す。在韓米軍は3万人に満たない。中国は、韓国に圧力をかけることを慎むべきである。韓国には戦略的独立性を許しつつ、韓国と北朝鮮の間でヘッジ政策をとることが、中国のより大きな利益になる、と述べています。

出典:Sukjoon Yoon,‘Are China’s THAAD Fears Justified?’(Diplomat, February 20, 2015)
http://thediplomat.com/2015/02/are-chinas-thaad-fears-justified/

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 THAAD配備問題は、韓国で大きな問題になっています。米中間で苦悩している韓国の元軍人のこの記事は、中国の懸念と韓国の苦悩を理解する上で、興味深く、有益です。著者は、THAADの韓国配備は中国が考えるような「ゲームチェンジャー」ではなく、文句があれば、ワシントンと談判すべきだ、「中国の核心的戦略パートナー」である韓国に圧力をかけないで欲しい、と懇願します。今日の韓国においては、中国の国力増大を背景に、中国と米・日の間でうまく均衡をとって行こうとする所謂バランサー政策的な考えが強いので、論説は、今日の韓国のムードを表していると言えます。しかし、国際政治の厳しい現実は、韓国に明確な選択を迫っています。

 少なくとも安全保障に関する限り、中国の戦略は、自らの軍事力を強化し、同時に、日米韓の協力体制を出来るだけ中立化することにあります。その観点から見れば、中国にとって当然の政策は、韓国との関係を緊密にしていくことでしょう。尹も自ら韓国は米中の間の「楔」だと述べています。その意味で、中国の外交戦略の中で、韓国は重要な優先事項になっていると思われます。昨年7月には習近平が自ら訪韓するなど対韓重視外交を展開しています。同時に、アジア・インフラ投資銀行への参加で韓国に強い圧力を掛け、今THAAD問題で強い圧力をかけています。

 韓国は、大変気を使いながら、対日、対米関係に当たっています。勿論、韓国にとって、今や貿易の4分の1が対中貿易となっていることや、対日・対米均衡効果が期待できることにメリットを見出していることは容易に理解できます。しかし、今、韓国外交は対中外交のスタンスの取り方という基本問題につき正念場にあります。安保と経済は違う次元の問題です。

 THAAD配備問題は、米韓関係にも影を落としています。米側は苛立ちを強めているでしょう。今日、米韓関係は、THAADの配備問題の他、戦時作戦統制権の韓国移譲問題(2015年12月移譲予定を昨年再度延期、2020年代半ばに移譲することになっている)、基地移設問題、米韓原子力協定改定問題など種々の重要課題を抱えています。しかし、何よりも注視されているのは、韓国の対中国基本姿勢という構造的問題です。

  
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