2024年4月17日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年3月31日

 新米国安全保障センター(CNAS)のパトリック・クローニン上級顧問、バン・ジャクソン同客員研究員及びアレキサンダー・サリバン同研究員は、2月25日付のリアル・クリア・ディフェンスに、「カーター新国防長官への助言:リバランスを現実のものに」と題する共同記事を寄稿し、(1)北朝鮮が残存性のある核能力を持つ可能性を踏まえ、抑止力と即応体制を構築すべきである、(2)同盟国・友邦国の軍事能力向上を推進すべきである、(3)中国との摩擦低減に努力すべきであるとの3つの提言をしています。

 すなわち、新国防長官は、「アジア太平洋へのリバランス」を疑う余地のないものにすべきだ。平和で繁栄し、法に基づくアジア太平洋地域秩序を築くために、米国はその影響力を強化すべきである。

 第1に、抑止力と即応体制を強化すること。北朝鮮はいずれ核能力を保有する方向にある。そうなれば、戦略上の問題が起きる。北朝鮮は、核戦争のリスクなしに、挑発行動や軍事行動をとれるようになる。北朝鮮の核能力の進展は止められない。カーター長官は、半島での限定的戦争への備えをする必要がある。外交的解決は可能かもしれないが、それが失敗すれば同盟国は次の事態に対応しなければならない。

 第2は、同盟国、友邦国の軍事力強化を推進すること。アジア諸国は軍事力の近代化を図っているが、特定の武器の分野で競争が起きるリスクがある。また、誤解や新しい技術によって、突発的なエスカレーションが起きる可能性もある。新国防長官は、潜在的な敵対国に対処する同盟国側の能力を構築することを最優先課題として、対同盟国・友邦国協力を進めるべきである。これらの国が、攻撃的ではなく、防御的な方向に向かうようにすべきである。

 日本は、向こう2年の間に、限定的ではあるが集団的自衛権の行使に参加するようになるだろう。カーター長官は日本と引き続き緊密に協力していく必要がある。米国は、日本の一層大きな役割が如何に有益かを周辺国に説明するとともに、日本の新たな貢献を日米同盟の枠内のものとすることによって、これらの国の懸念を早期に払しょくすることを率先して行うべきである。

 第3に、中国との摩擦を低減すること。米国は中国の台頭を歓迎すべきだが、中国の長期的な意図や海洋での行動については確信が持てずにいる。同盟国・友邦国の強いネットワークを誇示することや地域的な透明性を高めることによって、中国は強圧行動が取り難くなる。

 更に、2つの政策によって紛争の種を除去することができる。第1は、軍同士の交流を制度化していくことである。第2に、係争海域での関係国の行動のロードマップを作成し、係争海域の透明性を高めることである。


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