2024年4月20日(土)

日本の漁業は崖っぷち

2015年3月30日

ニシンに漁獲枠すらない日本

 マッサンの舞台である余市の話に戻ります。余市はリンゴの産地でもあります。リンゴとニシンは、関連がないように思えますが、リンゴを使ってニシン漁の問題をご説明しましょう。

 リンゴは持続的に収穫することができます。その年の気候によって出来高が変わったり、自然災害で一時的に収穫に悪影響が及ぼされたりすることもあるかもしれません。しかし、毎年収穫はできます。それは農家が、リンゴの収穫が減ったからといって、小さい実を根こそぎ取ったり、木そのものを切って売ってしまったりすることがないからです。もし、そんなことをすれば、誰かが止めるでしょうし、そもそも持続性がないことは農家自身も理解するはずです。

 ニシンがほとんど消えてしまったのは、リンゴの「木」の部分にも手を出してしまったからです。海の中は陸と異なって外から見えません。産卵に来るニシンを根こそぎ獲り続けてしまったのに、それを環境の変化だけのせいにしても何も解決しません。

 もちろん自然環境の変化がニシンに悪影響を与えた可能性は否定しません。しかし、それではなぜ北米や北欧のニシンの資源は安定しているのに、日本のニシンの資源は壊滅的になっているのでしょうか? 日本だけ特別に環境の変化があったのでしょうか? リンゴの「木」、つまり産卵する親の資源をどれだけ守って資源を持続させるかというのが、資源管理の基本です。制度で「木」を切るのをやめさせねばならないのです。この最も大事な部分を行政が「自主管理」の名のもとに漁業者側に任せてきてしまったことに問題があります。

 日本では、同様に「木」に例えられる大きな打撃を受けてしまった資源が数多くあります。その結果、世界では水揚げの増加が続いているのに日本は減少を続けてしまっているのです。世界銀行の試算では、2010年に比べて2030年の水揚げは平均で23.6%の増加になっているのに、一地地域だけ9%の減少見込みとなっています。残念なことに、それが日本なのです(表)。これは深刻に受け止めねばなりません。

 これだけ資源が減っていても、日本のニシンには漁獲枠すらないのです。世界中でニシンに漁獲枠を設定していない国は日本以外にあるのでしょうか? 少なくとも、欧米・北欧を始め日本にニシンを輸出している国にはありません。


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