ヒットメーカーの舞台裏

2015年4月10日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 普通の茶葉をきめ細かい粉末にしてお茶を点(た)てる。茶道の抹茶のように、臼(うす)で「挽く」、お湯を「沸かす」、茶筅(ちゃせん)で「点てる」という3つのプロセスをこなす。健康をキーワードにしたシャープの調理家電「ヘルシオ」シリーズとして2014年4月に発売。実勢価格(税別)は2万円強と高めだが、同年末までの累計生産は14万台となり、12月の生産は立ち上げ時の4倍に達する人気だ。

試作を重ねた臼が茶葉を20ミクロンの粉末に挽く

 茶葉を丸ごと飲むので、各種ビタミンや食物繊維、抗酸化作用が指摘されるカテキンなどをしっかり摂取できる。外部研究機関に委託した評価では、カテキンは急須でいれる場合に比べて1.9倍に増える。お茶だけでなく、お茶に牛乳を加える「ラテ」のコースもあり、いずれもホットとコールドができる。

 できたお茶は濃厚に見えるが、風味よく、意外とさっぱりしていた。セラミック製の臼で挽いたお茶の粉末は、そのままアイスクリームにかけたり、料理に使ったりもでき、これもユーザーから好評を得ている。

 開発に着手したのは12年末。指揮を執った調理システム事業部副事業部長の田村友樹(50歳)によると、当初は「ヘルシオ」シリーズのコーヒーメーカーを検討していたという。だが、「“健康”の訴求が難しく、競合メーカーも多いため参入障壁は極めて高い」と断念した。

 直後、お茶に着目したのだが、決め手となったのは田村が文献を当たるうちに出会ったひとつの事実だった。急須でいれた場合、栄養分の7割は茶がらとともに捨てられるというのだ。田村は粉に挽いてお茶を点てるという伝統の茶道は、「栄養摂取という面でも理にかなっている」と感心した。そして「茶葉を丸ごといただくところに活路がある」と、自信が芽生えた。

 ミルで豆を挽くコーヒーメーカーのようなデザインとし、基礎設計も進めていった。だが、役員も出席して開かれた13年夏の商品化検討会議での評価は散々だった。出席者の7割方が「売れない」という意見だった。田村はその日のうちにメンバーを集め「コンセプトを1から変えよう」と呼びかけた。従来のデザインは洋風で、「お茶」よりも「カフェ」のイメージが強かった。このため「店頭でも埋没するだろう」と見られたのだ。ここから田村は「和のイメージ」へと転換させていった。

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