2024年4月25日(木)

ヒットメーカーの舞台裏

2015年4月10日

 内蔵していた臼と、お茶を撹拌する容器本体を外に出すことで、飲料サーバーとして個性あるデザインができた。商品化の承認を得て、「技術上、最大の難関」(田村)となった臼の試作を本格化させた。抹茶の専門会社で、石臼の構造や粉砕するために臼に刻まれた溝のパターンを勉強させてもらい、それを再現するところから始めた。

田村友樹(Tomoki Tamura) (調理システム事業部副事業部長兼商品企画部長)
1964年生まれ。87年に大学の工学部を卒業し、シャープ入社。白物家電の開発、企画に従事し洗濯機などを担当。98年から5年間、米国販売会社でマーケティングに従事。帰国後は調理家電の海外向け商品企画の責任者を務め、14年10月に現職。学生時代からヨットレースを楽しんだスポーツマン。

 ところが、時間をかけて挽いても粗い粉しかできず、お茶にすると喉につかえる始末。使い勝手を考えると、1人前は3分で挽けるようにしたかった。だが、臼の回転を速めると茶葉が高温になって栄養分が損なわれるというジレンマにも陥った。

 溝のパターンや臼の直径寸法などを試行錯誤し、30種の試作品から最適の構造を引き出した。

 その結果、粒径が20ミクロンというパウダー状で喉ごしもよいお茶が、2分で挽けるようになった。挽く時の温度も栄養分が残る範囲に抑えられている。最終設計が完了したのは、新茶の初夏に間に合わせようと、田村が4月に定めていた発売日のわずか2カ月前だった。(敬称略)

  
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◆Wedge2015年3月号より

 


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