WEDGE REPORT

2009年8月13日

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土着菌センター。これも手作り。

 養鰻場跡を無償で借り受けて土着菌を育てた。米ぬかと菌、黒糖、水を加えて菌を増殖させる。そのためには、毎日30分~1時間、スコップでの撹拌作業が必要となる。4人一組での分担作業になるが、腰痛を抱えた高齢者は「自分が休んだら皆の迷惑になる」と休まなかったという。こうして出来上がった土着菌を家畜の餌に交ぜて与えると、糞尿の臭いがしなくなった。この成功を期に土着菌センターを拡張するべく、またしても住民のボランティアで新施設を建設した。この土着菌を畜産業者に、また肥料として農家にも販売した。さらには、土着菌を肥料として育てたサツマイモから、焼酎を作った。

 500万円近くの純利益があがるようになって考えられたのが、住民全てへ1万円のボーナス給付(06年)だ。政府が行った定額給付金とは違い、誰も恥じることのない、真っ当な報酬だ。08年にもボーナスをと豊重さんが考えたとき、まとまったお金があるのなら、「高齢者や子どもたちのために使ったほうがいい」と、住民の総意でボーナスを見送り、高齢者用のシルバーカー(手押し車)が購入された。十把一絡げに定額給付金を国民に押しつけた政府は、この話を聞いてどう思うだろうか。

韓国まで広がった感動

お洒落な工房で仕事をする、陶芸家・村久木孝志さん。

 さらには、空き家を「迎賓館」として芸術家を招致した。芸術家たちの暮らす家を訪ねると、本当に面白い。陶芸家・村久木孝志さんの作業場は、森林のなかのコテージのようだ。石原啓行さんの幻想的な絵は、空き屋を改造したアトリエで鑑賞できる。暗い日本家屋のなかで石原さんの絵は異世界への入り口のように見えた。彫刻家・中尾昶さんは、牛小屋を改造してギャラリーにしてしまった。

 彼らが、住民とふれあいながら、絵や陶芸を教えている。本当に楽しそうだ。また、「どうしても、やねだんに住みたい」と、神戸からやってきたプログラマーの池田良行さんは、子どもたちにパソコンを教えている。
 

「ここは集中して仕事ができます」と画家の石原啓行さん。

 今後は「農業Iターン」として、こちらも空き家を整備して寄宿舎にして、農業、畜産などについて学んでもらう取り組みもこの秋からスタートさせる。空き家を整備するのも集落の人々で、賄いさんも集落の人から募集する。

 豊重さんのアイデアは止まることをしらない。「行動するから、ひらめきも生まれるのです」と、豊重さん。言うは易し、行うは難しとはまさにこのことだ。実際、行動の第一歩を踏み出すのは難しい。その一歩を踏み出させてくれるリーダーがやはり欠かせないのだと思う。豊重さんは後継者の育成にも力を入れている。

彫刻家・中尾昶さんご夫婦。

 

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