科学で斬るスポーツ

2015年4月7日

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玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

 では、どう黒田は適応したのか。大リーグに挑戦する前の広島時代と昨年のヤンキース時代のフォームを比較した(図2、図3)。

図2 大リーグに渡る直前の広島時代の黒田投手と、ヤンキース時代の黒田投手の投球フォーム(図3も同様)(提供:石橋秀幸氏、田口有史氏)
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図3 右肘の位置や、左かかとの着地の仕方が異なることがわかる(提供:石橋秀幸氏、田口有史氏)
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 興味深いことに、素人目にみても下半身の使い方は、一見ほとんど変わらない。もちろん肉付きは大きくなった。広島時代の上半身を見ると、上体をひねり、テイクバックは背中方向に深い。踏み出し足が着地する時の左ひじは、少し曲がっている。右腕の手首と肘の高さは同じになる。タメのある速球派の投げ方である。

 一方、ヤンキース時代のフォームは、テイクバックは小さく、センター方向に向かっている。踏み出し足が地面についた時の右手首の高さは右肘よりも高い。

 広島の元トレーニングコーチで、慶應大スポーツ医学研究センター研究員の石橋秀幸さんは、「ヤンキース時代の特徴は、左ひじと、左膝の捕手方向への並進移動(平行移動)にある。ワインドアップで、上げた左脚を降ろしながら左膝を前に出すと同時に左ひじを平行移動。足裏全体で着地しているのがわかる。一方、広島時代は、左かかとから着地している。この投げ方の違いが、傾斜のきつい、マウンドの固い大リーグで適応できた理由の一つだ」と石橋さんは指摘する。

日本式から大リーグ式へ

 日本式のかかとから着地する投球法は、日本の柔らかい、傾斜の緩いマウンドに適応したものだ。踏み出し足のステップ幅は大きくなり、重心が低くなる。軸足のユニフォームのすね部分が土につくことが多い。下半身の力を上半身に伝え、腕を大きく弧を描くように使える。典型的な日本の剛速球投手のフォームである。

 しかし、かかとからつく、重心の低い投げ方は、大リーグの固いマウンドでは足への負担が大きく、膝ひいては肘、肩の故障の一因になる。

 「黒田投手は、ひざと肘の並進に意識をし、大リーグ式に進化したと言える」と石橋さんは強調する。

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