科学で斬るスポーツ

2015年4月7日

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玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

 シアトルマリナーズで活躍する岩隈久志投手も大リーグに適応した一人だが、軸足の使い方は黒田投手と異なることが図7からも読み取れる。軸足をプレートから離し、巧妙な重心の移動、上半身の柔らかさで力をボールに伝えている。大リーグの適応の道は、必ずしも一つではないということの証左と言える。

図7 岩隈投手の投球フォーム。軸足はプレートに固定せず、重心を滑らかに移動している(提供:田口有史氏)
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配球も大きく変化

 黒田の適応力は、恵まれた体に加え、自分の長所を磨く筋力トレーニング、コンディショニングにある。しかし、それだけではない。球種や配球も大きく進化させた。

 大リーグに渡る前にはストレート、カーブ、スライダー、シュート、フォークという多彩な持ち球があった。最大の武器はフォークで、150km台のストレートに140kmの高速フォークで的を絞らせなかった。

 2007年まで元広島カープの捕手で、黒田投手の投球を受け取っていた木村一喜さんは「フォークは3割前後投げていた。コントロールもよく、真っすぐ待ちの打者には、早いカウントから投げていた。逆にシュートは完成度が低く、投げても1試合2、3球程度」と振り返る。

 それが大リーグではフォークを封印し、スプリットを多用。シュートをツーシームに変えた。

 「フォークを投げなかったのは、不安だった肘に負担をかけないため。マウンドの固さなど環境を理解し、何を優先すべきか柔軟に対応したからだろう」と木村さん、石橋さんは口をそろえる。

 ボールを人さし指と中指で挟むフォークは肘への負担が大きい。これを避けるため、人さし指と中指を少し離してボールを握るスプリットに変えた。

 シュートより変化が多彩なツーシームを多投したのは、大リーグのバッターは投手方向に踏み出して打つ、パワーヒッターが多いのも一因と見られる。

 石橋さんは「このツーシーム、スライダーを中心に、フロントドア、バックドアと呼ばれる変化球を巧妙に使い分けていた。大リーグに行って覚えた投球術だ。ツーシームは、決め球にもカウントを稼ぐ球にも状況に応じて、使い分けた」と分析する。

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