エネルギー問題を考える

2015年4月7日

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杉山大志 (すぎやま・たいし)

IPCC第5次評価第3部会報告書 統括執筆責任者

1991年東京大学理学部物理学科卒業。93年東京大学大学院工学研究科物理工学修士了、(一財)電力中央研究所入所。国際応用システム解析研究所(IIASA)研究員、国際学術会議科学執行委員、京都議定書CDM理事会パネル委員、産業構造審議会専門委員、IPCC第四次評価第三部会及び統合報告書主著者を経て、現職。(一財)電力中央研究所上席研究員。

 さて現実には、2030年を待たずして、過大な省エネ見通しと現実との乖離が明らかになって、長期エネルギー需給見通しが改定されるだろう。だが、その過程におけるエネルギー政策の歪みと、国民経済への負担が危惧される。

 苦い教訓を忘れてはならない。かつて日本では過大な再エネ導入目標が設定され、やがてそれを達成するためとしてFIT制度が導入されて、今日の混乱を招いた。いま過大な省エネ見通しを看過すると、同じ轍を踏むことになりかねない。

 特に今回のCO2目標は、単に国内的な位置づけではなく、2020年以降の国際枠組みを決めるパリでのCOP21に提出されるので、国際的な重みが加わる。一度言った数字は取り下げにくくなるので、増々要注意である。数字は慎重に決めねばならない。鳩山政権の△25%削減目標と同様に軽々に世界へ提出して、後でそれを撤回すれば、国際的な信頼を失うことになる。

 いま日本政府は、安定した経済成長を目指している。そうであれば、為すべきことの1つは、低廉で安定した電力需給を確立することである。

 報道によれば、自民党は、電力価格を震災前の水準に抑制すること、そのために、ベースロード電源比率を60%以上にするという骨子で提言案をまとめた(電気新聞記事参照)とのことである。

 だが過大な省エネ見通しによって、電力価格倍増や、あるいはそれを上回る国民負担が生じるならば、ベースロード電源を増やして電力供給コストを下げるとしても、その意義は大いに減じられてしまう。

 いま世間の耳目は、電力供給に集まっている。だが電力需要においても、過大な省エネの見通しは、国民経済への負担をもたらす。このことを今、重要な問題として関係者に提起したい。

  
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