2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年4月24日

 もし5月の首脳会談が前向きなものとなれば、中印経済は大きく後押しされる。将来の主導的大国が平和的で建設的な協力に向け歩んでいることが示されれば、21世紀はより穏やかな世紀となるであろう、と述べています。

出典:Kishore Mahbubani,‘Two giants with an opportunity for partnership’(Financial Times, March 17, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/5024f39a-c8e9-11e4-b43b-00144feab7de.html#axzz3UhphEWSM

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 この論説は中印関係の将来を過大視し、将来、中印関係が今の米中関係に代わって、最も重要な二国関係になる、とまで言っています。「将来」がどの程度先を指すのか定かではありませんが、インドが米国のような、国際政治のルールを決め、その執行に責任を持つ国になるとは考えられません。インドの関心は、先ず南アジア諸国であり、インド洋沿岸地域です。確かにインド洋は中東、アフリカにまで及んでおり、かつては印僑が中東、アフリカで活躍していました。しかし、インドがそれを超えて、欧米先進国世界にまで政治的影響を及ぼすとは考え難いのです。つまり、インドは将来にわたって、世界をリードするような国家になることはないでしょう。

 論説は中印2カ国が建設的協力をすれば、21世紀はより穏やかな社会になるであろうと言っていますが、それは言い過ぎでしょう。

 中印関係についていえば、米国はできるだけインドを取り込もうとするでしょうが、インドは米国の対中政策の一翼を担おうとはしないでしょう。しかし、インドは国境紛争もあり、中国に警戒的であり、経済関係が進展しても、政治的には中国に対するヘッジ策を取るでしょう。

 中印関係の進展の障害はパキスタンです。パキスタンはインドの宿敵であり、中国はパキスタンと近い関係にあります。論説はインドとパキスタンの国境沿いに自由貿易地域を設置する構想について述べていますが、容易に実現するとは思えず、パキスタンが中印関係のとげであるという状態はなかなか解消されないでしょう。

  
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