2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年4月30日

 中国は中東に同盟国を持たず、軍事基地ももたない。中国海軍はまだ米海軍に数十年遅れている。しかし中国には、経済影響力などの手段がある。米国がペルシャ湾で中国の空母戦闘群に対決するときはまだ来ていない。しかし中国との共生、衝突、またはその両方に備える必要がある、と述べています。

出典:Keith Johnson,‘China Is the New Power Broker in the Persian Gulf’(Foreign Policy, March 26, 2015)
http://foreignpolicy.com/2015/03/26/chinas-thirst-oil-foreign-policy-middle-east-persian-gulf/

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 この論説は、石油確保のために中国が中東に進出してきている状況、それに伴う米国にとっての悩ましい点をよく描写しています。海賊対策としてソマリア沖に海軍を派遣していることは、中国が遠洋型海軍の構築を目指していることを示唆し、特に、中東からの石油ルートの確保が大きな目的の一つであることは間違いありません。ただ、それがすぐに米海軍に比肩し得るようなものになる見通しはないというのは、論説の言う通りでしょう。

 この論説のタイトルは「中国はペルシャ湾における新たなパワー・ブローカー」というものですが、ペルシャ湾で中国がパワー・ブローカーになっているかといえば、今は、そうはなっていません。しかし、今後のイラン・中国関係の動きによっては、急速に中国がペルシャ湾での力をつけることがあり得るでしょう。イランを孤立化させることのコストには、中国の中東における影響力、特に経済的影響力を増大させ得るという点が含まれることも視野に、よく考えてみる必要があります。

 中国の原油輸入は2013年統計では、1日あたり、サウジから100万バレル、アンゴラから80万バレル、ロシアから49万バレル、イランから44万バレル、オマーンから40万バレル、イラクから31万バレル、ベネズエラから30万バレルなどとなっており、サウジが最も重要です。中国とサウジなどアラブ湾岸諸国との関係、イランとの関係は、今後、注意深く見ていく必要があるでしょう。

  
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