世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年5月1日

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 2010年にクリントン国務長官は、南シナ海の航行の自由などを守ることは米の国家的利益であると述べたが、その後の5年間、中国は以前に増して支配を強めている。これからの5年を再び愚図愚図と過ごしてはならない、と述べています。

出典:‘Conquering the South China Sea’(Wall Street Journal, March 25, 2015)
http://www.wsj.com/articles/conquering-the-south-china-sea-1427325614

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 中国による南シナ海での人工島建設の様子を写した画像が公海されて以来、米国や沿岸国から、これを懸念する論説、社説、政府要人等の発言が相次いでいます。この社説が支持しているマケインらの書簡もその一つであり、米太平洋軍司令官、カーター国防長官、オバマ大統領も、南シナ海における中国の行動について懸念を表明しています。この社説は、中国による南シナ海支配の拡大に対して強い危機感を有する立場から、具体的行動を取らないで来た米行政府を批判しています。この社説は、懸念を表明するだけでなく、(1)フィリピン等関係国の要員を訓練する、(2)有志国による海域の共同パトロールを行う、(3)今年のパシフィック・リム海上演習に台湾を参加させる、(4)台湾へのF16供与と潜水艦の配備支援を決断する、といった具体的な提言をしている点に価値があります。

 中国側は、4月9日に外交部報道官が、人工島の建設は既存の軍事施設の拡充に過ぎず、さらに、海洋探査、海洋環境保護、海難救助、気象観測、台風からの避難など民生目的にも役立つなどと、開き直ったような発言をしています。埋め立て推進の既成事実化に自信を示しているように思われます。また、ファイアリー・クロス礁では2本目の滑走路が造られているとの報道もあります。中国がスプラトリーで徐々に人工島の建設を進めれば、南シナ海に防空識別圏を設定する拠点となり得ますし、南シナ海のA2/AD(接近阻止・領域拒否)環境を強化することにもなります。

 南シナ海で中国が一方的に、力によって支配を確立することは、当該地域の安定にとって有害なことであり、日本としても、この問題について関係国と協力していく必要があります。特に、要員の訓練や米国を含む有志国による共同パトロールは検討に値するでしょう。米国や沿岸国の、政府、要人、世論の機運が高まっているのは、こうした有志国による取り組みに本格的に乗り出す好機であり、これを逃すべきではないと思います。また、上記マケインらの書簡も指摘していることですが、中国による埋め立て工事等の不安定化行動を、画像等により、目に見える形で定期的に公開し続けることも重要でしょう。

 なお、社説はASEANを通じて対処しようとしても徒労に終わるだろうと述べていますが、ASEAN加盟各国が南シナ海に対して有する利害の大きさの違いを考えれば、概ねその通りと思います。

  
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