WEDGE REPORT

2015年5月7日

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 しかし、これは陸前高田に限った話ではない。いま、三陸沿岸を車で走れば、どの道もダンプが溢れている。あちこちで防集を実施し、山を切り出して高台をつくり、かさ上げを行う光景が延々と続く。眼前に現れる漁港は、小さくとも確実に修復工事がなされ、集約されることがない。30人の漁民が使う、ある漁港の復旧には35億円の国費が投じられている。

三陸の沿岸はダンプの車列で渋滞し、土埃が舞う(宮城県石巻市の市立大川小学校付近)

 震災前から三陸地方は人口減少と少子高齢化が進んでいた土地だ。その上「震災で人口減少が十年程度進んだ」(岩手県大槌町の人口対策計画)。にもかかわらず、各市町村ごとに同じような公共事業が推し進められ、それぞれ後戻りがきかなくなっている。

 宮城県名取市閖上地区には、震災前、約5500人が住んでいたが、津波で約800人が犠牲になった。市は当初から現地再建の方針で、3000人規模の町をつくる目論見だったが、住民意向調査で帰還希望は34%と低く、時間が経つと25%まで落ち込んだため、2000人強の規模に縮小した。

 区画整理事業は、5メートルのかさ上げ範囲を45ヘクタールから32ヘクタールへと縮小したが、防集を用いた集団移転の移転先は地区内とし、災害公営住宅も地区外を拡大せず、閖上を第2希望、第3希望とした住民も第1希望扱いとするなどして、帰還希望者数を懸命に維持。最終的に755世帯、事業費約270億円の計画で昨年10月に着工した。ここまで市が規模にこだわったのは、国費でかさ上げを行うためには「1ヘクタールあたり40人」という人口要件を満たす必要があったためとみられている。

 集団移転を行うにしても、なぜ巨額の資金を要する現地再建にこだわるのだろうか。閖上では多くの住民が内陸移転を求めていたし、隣には仙台市がある。土地の余裕がない陸前高田も、市町村の枠を超えて、隣接する大船渡市や内陸の住田町と集住し、町の規模を維持するような方向は模索できなかったのだろうか。陸前高田、大船渡、住田は合わせて気仙と呼ばれてきた地域なのだが、住民はこう口を揃える。

 「大船渡と高田は昔から仲が悪い。合併の話は以前からあるが、大船渡にのみ込まれると高田は警戒してきた」

 ある地域のまとめ役はこんな話をしてくれた。

 「津波の被害を受けた集落がそれぞれ防集を使って、少し奥地の高台に移転したのだが、地域外への転居も発生しているから、各集落が小さくなりながら不便な奥地へバラバラに引っ込んだような形になっている。私自身は、まとまって集住しないと診療所もスーパーも来てくれないと思うのだが、隣の市はおろか、隣の集落とも仲が悪いのが田舎。合同でニュータウンをつくろうなんてとても言えなかった」

 かくして三陸では震災から4年が経った今、土木工事が本格化し、多くの町がもとの場所かそれに近い場所に戻る、現地再建型の復興を進めている。

 集中復興期間5年間に用意された復興予算26兆円のうち、インフラ工事には10兆円が使われた。「浸水域すべてに居住制限をかけ、ニュータウンをつくって広域から集住。もしくは逆に、被災者に現金を配って自由な自主再建を促したほうが、現状より安上がりで、かつ集住も進み、持続可能性ある町づくりになったのでは」(ある被災者)という意見はずしりと重い。

(下)へ続く

  
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◆Wedge2015年5月号より

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