オトナの教養 週末の一冊

2015年5月1日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 最近その存在がクローズアップされるようになってきた遺品整理士の仕事を活写した本である。一読して、自分が本書に紹介されているような状況に直面したらどうしたらよいのだろうかと深く考えさせられた。自分も含め多くの人は、自分の親はもちろん、結婚している場合には配偶者の親の「旅立ち」に高い確率で立ち会う可能性があるが、その時に必ず伴ってくるのが、故人の遺品整理である。人によってその多寡はあろうが、どう整理するかはかなりの悩みどころになるだろう。そういう意味では多くの人に共通する課題といえる。

家族だけでは処理できない

『遺品整理士という仕事』
(木村榮治、平凡社)

 自分の所有する物ですら、引っ越しや大掃除などでしばらく目にしていなかったものが出てきたら、思わず見入ってしまったり、文章や本だったりしたらしばし読んでしまったりする。これではいくら時間があってもたりない。結局、最後は「エイヤ」で捨ててそれなりに決着をつけるのだろうが、親族が亡くなった場合などは、まったく状況が異なるだろう。引っ越しなどとは比べものにならないくらい大変な状況に置かれる。亡くなった人のことを思えば、ぞんざいな扱いは出来ないし、まして残された物が多い場合には本当に大変だ。家族だけでは到底処理できないことを悟り、プロの遺品整理士にお願いするケースが出てくるのは十分ありうることだ。

 故人を思う気持ちや愛情が残っているからこそ、遺品は残しておきたいと思うかもしれないが、それにも限度があるのが実情だ。このほか、価値のある高額なものが残っている場合などには、なおさら扱いは難しくなる。

 住宅事情の悪い都会では、ひとまずどこか広いところに置いておいて、あとからゆっくり考えよう、ということが出来ないという意味でもなおさら深刻だ。さらに、一人暮らしの高齢者が増えて、孤独死していることも最近は多い。そうしたケースはまさにプロの出番となる。

 自分にも経験があるが、親族が亡くなった直後というのは、多くの人は通常とは違う精神状態に置かれる。そうした中で葬儀を取り仕切り、お世話になった方へのご挨拶などの作業をしなければならず、それに遺品の整理が加わると本当に大変だ。だからこそ必要な場合には、信頼できるしっかりした整理業者に任せたいものだ。

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