2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年5月5日

 大統領が内閣、立法府、党を排除して密室で取引し続けるのを許してはならない。馬英九が今のやり方を続ければ、馬英九への抗議の波がまた出てこよう、と指摘しています。

出典:‘Jumping on the AIIB bandwagon’(Taipei Times, April 1, 2015)
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2015/04/01/2003614863

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 馬英九政権はAIIBへの参加を表明し、中国側は「台湾が適切な名称を使用する限り参加を歓迎する」と応じましたが、結局、中国は台湾のAIIBへの創設メンバーとしての加盟は拒否しました。

 馬政権の本件についての決定が手続きを十分に踏まず拙速に行われたというのは、この社説の指摘する通りでしょう。

 馬政権は、AIIB参加のメリットについて、経済的には、台湾企業、特に建設業の商機が増える、政治的には、中台関係にプラスになる、台湾の国際的地位の向上になる、と強調しています。しかし、台湾企業がアジアのインフラ整備事業に参加できるかもしれないといっても、機会は限られるでしょう。さらに、現在、台湾人の多くが抱いている不満は、馬政権は大企業優遇で格差を放置しているということですから、AIIBへの参加は台湾の大衆には魅力的に映らないでしょう。台湾の国際的地位の向上になるかどうかは、どういう資格、名称で参加できるかによります。この点、中国は、「一つの中国」の枠組みを厳守することを求めており、それを受け入れれば、台湾の国際的地位にとり、かえってマイナスにもなりかねません。馬英九がAIIBへの参加を表明した直後に、小規模ではありますが、総統府周辺で、「一つの中国」の下でのAIIB参加に反対する学生デモが起こっています。

 台湾では、2016年1月には総統選挙があり、諸問題が争点化されやすい「政治の季節」になってきています。両岸サービス貿易協定が手続きをよく踏まないでなされたなどの批判から、議会が占拠された「ひまわり運動」が2014年にありました。AIIB参加問題も、上述の通り既に学生デモが発生するなどしており、対応を誤れば、「ひまわり運動」のようなことに至る可能性は排除できないでしょう。

  
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