世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年5月14日

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 ハドソン研究所米海軍力センターのマグラス副所長が、National Interest誌ウェブサイトに4月10日付で掲載された論説にて、3月に公表された米の新海洋戦略について、今回報告は中国を名指ししており、中国は強い反応を示すかもしれず、米中の海軍力競争は今や双方が公然と認める競争となっている、と論評しています。

 すなわち、2015年海洋戦略は、具体性に富み、また、作戦志向的になっていることで、専門家からは前向きの評価を受けている。他方で、中国の反応はどうだろうか。

 前回の2007年海洋戦略は中国を名指しすることを避けた。当時のマレン海軍作戦部長は、行間を読めば中国もわかるだろうと名指しをしないことに決めた。マレンの予想は正しかった。米国がその世界防衛システムを一層強化し世界での主導者としての役割を維持していくことを婉曲的ながら鮮明にしたことを、中国関係者は決して好ましいものとは受け止めなかった。

画像:istock

 今回の海洋戦略には、そのような婉曲さは全くない。新海洋戦略は、海軍、海兵隊、沿岸警備隊が共同行動を行うことができるように、アクセスを確保し維持するために必要な作戦能力の戦略に焦点を置いている。アクセス確保の戦略は、中国が(それほどではないがイランも)取っている接近阻止・領域拒否戦略(A2/AD)に対抗するためのものである。中国は米国の圧倒的に有利な投射能力に対抗するため、海洋の自由な使用を拒否する必要があることを認識している。前回と違って、今回報告は中国を名指ししている。

 また、新戦略は、米国の強みである同盟国等のネットワークの重要性を強調している。豪、日、NZ、比、韓国、タイとの協力強化とともに、インド等との協力関係の推進を強調している。これを見て、中国は包囲網の構築を感じるだろう。2007年戦略でさえ中国封じ込めの文書だと考える中国関係者もいたので、今回の戦略には一層強い反応があろう。

 中国は、中国包囲網が作られているとして、海軍の増強・近代化や介入対抗戦略の強化を正当化しようとするだろう。更に、中国は南西アジアやアフリカばかりでなく米本土に近い南米やカリブ海地域に中国の基地などのネットワークを拡大することを試みるかもしれない。また、米戦略の中心的な狙いが中国にあるとして、中国関係者は、大国としての自尊心を一層強固にするかもしれない。最後に、中国はこれまで静かに海軍力強化を推進していたかもしれぬが、そういう時代は終わった。これから米中の競争が始まる。今や双方がそれを公然と認めている、と論じています。

出典:Bryan McGrath,‘America's New Maritime Strategy: How Will China Respond?’(National Interest, April 10, 2015)
http://www.nationalinterest.org/blog/americas-new-maritime-strategy-how-will-china-respond-12592

* * *

 2015年海洋戦略は、マグラスの言う通り、(1)中国の介入拒否戦略(A2AD)に対抗するための米海軍力の強化の必要性と、(2)日本等同盟国・友邦との協力ネットワークの推進の重要性の二点を強調しています。今回の戦略で中国が名指しされたことには大きな意味があり、同時に米が日本等同盟国との協力をいかに重要視しているかを示しています。

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