解体 ロシア外交

2015年5月11日

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 さらに、旧ソ連地域全体として、「ロシア的」な戦勝記念日からの逃避が目立っているように思われる。

 たとえば、今年から旧ソ連地域の多くで、冒頭で触れた「セント・ジョージ」のリボンを避け始めるという現象が目立つようになった。

 ウクライナは、同国の旗の色(水色・黄色)のリボンとケシの花をモチーフにしたシンボルを用いた。

 ベラルーシのルカシェンコも「セント・ジョージ」に代わるシンボルを作るよう明示、リンゴの花とベラルーシの旗の色(赤・緑)のリボンで新しいシンボルが作られた。

 また、国内に親ロシア的な未承認国家(「未承認国家」については筆者のインタビュー参照)・沿ドニエストルを抱えるモルドヴァは、「セント・ジョージ」のシンボルを用いた場合、個人であれば最大120ドル、公職にあるものであれば最大250ドルの罰金を課すという法案が提出された。モルドヴァ人にとって、「セント・ジョージ」は沿ドニエストルのシンボル、すなわち分離独立、無法、混乱、損失のシンボルとしてインプットされているようである。

親欧米路線でない国々でもロシア離れが

 極端な親欧米路線でない国々にもロシア離れの傾向が目出つ。

 カザフスタンは金・青のモチーフの新しい勝利の日のリボンを作成した。

 キルギスも国旗の色である赤と黄色のモチーフを作成して主要都市での記念行事に臨んだ。

 タジキスタンの若者や知識人は、非公式なロシアの影響力拡大を阻止するために、セント・ジョージリボンを禁止する方向で議論が勧められている。

 ウズベキスタンも、緑をモチーフに記念行事の準備が進められた。

 アルメニアも忘れな草をモチーフとした2015年のアルメニア大虐殺の100周年記念のためのシンボルを利用した。

 このように、ロシアの戦勝記念日をめぐっては、ロシアの国内・国際政治のみならず、多くの国々で様々なドラマがあった。「大祖国戦争」はソ連の国威高揚には大きな意味を持ったが、自分たちの独自のナショナリズムの構築を未だに進めているソ連からの独立国にとっては、「大祖国戦争」をロシア的に祝うことに大きな抵抗感があることもよくわかる。他方、その式典が、世界の諸国の構造の縮図となっていたこともまた興味深い。

 依然としてウクライナ情勢は不透明であり、ロシアと欧米の間の緊張も当面は続くが、戦勝記念日およびそれをめぐる動きにおける各国の振る舞い、対応は今後を読み解くうえでの一つの鍵となるだろう。

  
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