2024年4月25日(木)

Wedge REPORT

2015年5月20日

靖国神社参拝の動揺を払拭

 2013年末、安倍首相の靖国神社参拝後に米国政府は「失望」という声明を出した。この声明の発出を主導した上院議長でもあるバイデン副大統領は、安倍演説を聞いて「アジア諸国に共感を示したことに最も好感を持った」と述べた。靖国神社参拝で一時動揺した在米の日米関係専門家も、大多数が今回の演説を高く評価している。

 安倍演説は日米の和解や過去への反省のみを強調したわけではない。むしろ、日米が、戦後の世界で自由と民主主義を守るために共に歩んできたことがその主題である。

 戦後70年を経て米国が主導してきた国際システムは、現在経済面でも安全保障面でも大きな挑戦を受けている。挑戦を突きつけているのは、アジアインフラ投資銀行(AIIB)やアジア新安全保障観を提唱する中国である。この挑戦に立ち向かい、自由で公正、かつ開放的な地域秩序を維持するためには、日米とも国内で厳しい改革が必要となる。

 そのような中で、安倍演説は日米同盟を「希望の同盟」と位置づけた。日本はかつて国際秩序に挑戦したが、戦後は米国と共に秩序を維持し、今後はこの秩序をさらに発展させて世界に希望を与え続けよう─日本人の代表である首相が、米国人を代表する議員たちにこのように直接訴えかけた意義は限りなく大きい。

 日米はTPPを通じてアジアの経済秩序を改善し、米国のアジアリバランス政策と日本の積極的平和主義の相乗効果によって、地域の平和と繁栄に貢献しなくてはならないからである。

 一方、以上のような安倍演説のメッセージを理解することなく、中国や韓国に向けて謝罪をしなかったという的外れな批判が、中国や韓国、そして米国と日本の一部にも広がっている。そもそも、日本の首相が米国の議会で行う演説で、第三国に向けた謝罪を求めること自体が非常識である。しかも、安倍首相は村山談話も河野談話も引き継ぐことを何度も表明している。

偏狭なナショナリズムで歴史をもてあそぶのは危険

 歴史認識問題が繰り返される根本的な要因は、中韓だけでなく日本の一部にも偏狭なナショナリズムから歴史を政治的に利用する勢力がいることである。われわれは歴史の前に謙虚でなくてはならない。8月に予定される安倍首相の戦後70年に関する談話では、歴史をもてあそぶ危険への警鐘を自戒も込めて含めてもらいたい。

  
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◆Wedge2015年6月号より


 


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