窮地のシャープ
赤字決算の今こそボーナスを


坂本幸雄 (さかもと・ゆきお)  サイノキングテクノロジーCEO、元エルピーダメモリ社長

日本体育大学卒業後、日本テキサス・インスツルメンツに入社し、93年副社長。神戸製鋼所、日本ファウンドリー社長を経て、02年エルピーダメモリ社長。現在サイノキングテクノロジーCEO。

坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方

(画像:Ingram Publishing)

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窮地に陥っているシャープが、今すぐすべきと思うことが2点ある。1点目は「優秀な従業員の引き留め」、2点目は「顧客の引き留め」だ。

シャープは優秀な従業員の引き留めを急ぐべき(REUTERS/AFLO)

 エルピーダメモリが会社更生法の適用申請を行ったころ、私はリテンションボーナスと呼ばれる会社に一定期間在籍することでボーナスをもらえる権利を、会社に残って欲しい従業員に与えた。特にエンジニアが対象であったが、会社を去ったのはわずか39人で、最上級評価の社員は1人も辞めなかった。優秀な従業員がいれば、差別化した良い製品を出すことができる。

 だが、リテンションボーナスは銀行、裁判所、弁護士……あらゆるところから反対された。断行できたのは、テキサス・インスツルメンツで3年経たないと売却できない株をもらった経験があったからだ。日本企業は「人は宝」と口では言うものの、従業員に厳しいと思われているアメリカのほうが、引き留めるための具体策をもっているというのは皮肉だ。どこでも多くの場合、優秀な従業員から辞めていき、弱体化が進む。

 顧客引き留めについては、更生法適用申請が騒がれ出してすぐに、役員が顧客に幾度も丁寧に現状を説明して回った。アップルはすぐに購買、財務、法務の担当者を派遣してきて、2年契約をしてくれた。そんな中、「エルピーダ切り」を行ったのは、日本企業ばかりだった。

 これらの取り組みもあって、エルピーダメモリは、会社更生法適用申請の翌年、二千数百億円の純利益を出すことができたという。

 噂されるシャープの液晶部門分社化に意味を見出すことは難しい。将来的なジャパンディスプレイ(JDI)との統合を、経済産業省や産業革新機構は目論んでいるのだろうが、完全にコモディティ化した液晶で単に統合してもアジア勢に勝てない。

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「坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方」

著者

坂本幸雄(さかもと・ゆきお)

サイノキングテクノロジーCEO、元エルピーダメモリ社長

日本体育大学卒業後、日本テキサス・インスツルメンツに入社し、93年副社長。神戸製鋼所、日本ファウンドリー社長を経て、02年エルピーダメモリ社長。現在サイノキングテクノロジーCEO。

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