オトナの教養 週末の一冊

2015年5月22日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。福島支局、立川支局、経済部、政治部、ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスクを経て2014年より現職。著書に『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』『御社の寿命』、(いずれも中央公論新社)など

 すっかり定着した感のある中国人訪日客の「爆買い」という言葉だが、爆買いの背後にある中国の社会や中国人の事情を深く掘り下げた本である。

 日本経済にとっては、日本を訪れる多くの中国人が大量の買い物をしてくれるのは、決して悪い話ではない。消費を下支えしてくれる貴重な存在だからだ。ただ、彼らが爆買いするのは、中国人が自国で売られているものには全く信頼を置いていないから、という指摘には複雑な思いがする。

 「日本製は安全、安心」という根強い信頼感があるためだが、現実にはこれらの大半は「メード・イン・チャイナ」である。それでも中国で売られているものが信頼できないということから、日本の店で売っているモノを求めるのだという。

 〈パッケージに日本語が書いてあって、日本のちゃんとした店で販売されているということに中国人は安心するのですよ。逆にいえば、もしメイド・イン・ジャパンと書いてあって日本語の表示があっても中国国内で売られているものは信用できない〉

 これほどまでに自分の国で売られているのを信用できない、最初からニセモノかもしれないと思いこんでいる感覚には正直、驚かされるが、最近の食品偽装などの問題を考えると、多くの中国人がそう考えても仕方がない、ということもある程度は理解できる。

日本の「普通の生活」に感動する中国人
空気、水、トイレ、レストランの店員…

 さらに、日本にきて初めて日本に良い印象を抱く中国人は多くおり、何気ない普通の生活に感動する人が多いという指摘は印象的だ。きれいな青空、おいしい水、清潔なトイレ、レストランの親切な店員の接客態度などだ。

 それまでの偏ったイメージからは想像できない日本の様子をみて、日本観が180度変わる人も多いという。本書は日本が大好きな中国の人が実名で多く登場する。彼らの「日本愛」に正直、ありがたさを感じる一方、同時に「へえ、そんなことに感動するの?」という驚きもあり、日本がいかに恵まれているかを彼らの反応からあらためて知ることができる。青空やおいしい水に純粋に感動する中国の人から逆に学ぶことは多い。

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