ヒットメーカーの舞台裏

2015年6月11日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 庫内で野菜を眠った状態にして鮮度と栄養素を守るという国内の家庭用の冷蔵庫では初めての機能をつけた。日立は肉や魚などの鮮度を保つ「真空チルド」技術をテコに容量400リットル以上の大型機では国内で35%程度のトップシェアをもつ。2014年9月に発売したこの「スリープ野菜」機能で、首位の座を盤石にしている。

 実勢価格は最上位機種の「R-X6700E」で税別25万円前後。スリープ野菜のスペースは野菜室の奥側下部にあり、野菜室全体の約4割を占める。ほうれん草やチンゲン菜などを1週間、スリープ野菜と通常で保存したものを見せてもらった。

 通常保存では、すっかりしおれていたが、スリープの方は収穫直後のようにシャキシャキしていた。栄養素もしっかりキープされている。同社の分析によるとスリープで1週間保存したチンゲン菜のビタミンC残存率は97%。同社従来品の野菜室との比較では17%も改善した。

 この機能の開発に着手したのは12年の夏で、日立アプライアンスの開発センタ主任技師、船山敦子(47歳)が担当した。きっかけは、同年の新モデルで肉やサラダなどを保存する真空チルド室に「スリープ保存」の機能を付加したことだった。船山は肉や魚だけでなく、「サラダの生野菜にも鮮度保持の効果があった」ことに着目、直ちに野菜室への展開に踏み切った。

 野菜は収穫後も呼吸しており、炭酸ガス(二酸化炭素)や熟成に伴うエチレンガスなどを排出しているという。周りの炭酸ガスの濃度を高め、呼吸を抑制して冬眠状態にすれば、老化つまり鮮度の劣化が抑制できる─―というのがスリープ保存のメカニズムだ。

 炭酸ガスの確保には、部品交換の不要な光触媒を使っている。これで野菜から出るエチレンガスやにおい成分を分解し、炭酸ガスに換えるのだ。光触媒を作用させる光源にはLED(発光ダイオード)を採用した。この方式は真空チルド室で実用化済みだったことから、船山は「野菜もスリープ用に密閉したスペースを作れば、比較的容易に応用できる」と踏んだ。

光触媒がエチレンガスを炭酸ガスに換える

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