2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2015年5月21日

――第2の国際放送の設立などによって、中韓のように正論や定説を強く主張すれば良いという意見もある

佐藤:国際的な認知がすすんでメリットのある部分もあるが、領土問題では尖閣諸島と竹島の問題が相反しているため通用しない。竹島については、韓国側は領土問題が無いと言っているところに、日本が領土問題ありと主張して交渉のテーブルにつかせようとしている。一方、尖閣諸島の問題はその逆。つまり竹島戦略を採っていると中国から「竹島の話と同じように交渉するべきじゃないか」と言われる。本来、尖閣諸島には触れずにいるべきだったが、日本の主張をホームページに掲載したことで国際社会に問題だと認知させてしまった。

領土問題で日本のとるべき戦略は(PENG WU/GETTYIMAGES)

――対外広報向けにロサンゼルス、ロンドン、サンパウロに「ジャパン・ハウス」をつくるという動きもある

佐藤:政治エリートの間に念力主義が蔓延している。主観的願望によって客観情勢を変えるという念力。かつて、念力でB29を落とせるということをやったらどういうことになったか? 答えは自明だ。

 目的関数をつくって制約条件をつくり出して、それをどう操作して結局目的に近づけるのかという組み立てではない。結論があって、強く念ずれば、それが実現できると。その念ずるための札なり、藁人形なりがジャパン・ハウスであり、国際放送であるということになる。

――ポイントは標的を絞ること。日本はそれができているとは思えないが

佐藤:実はそれを研究した『プロパガンダ戦史』(中公新書)という本がある。第二次世界大戦中、日本のプロパガンダがうまくいかないとなった。そこで陸軍参謀本部がこの本の筆者である池田徳眞を引っ張ってきた。東京大学で古典学をやって、オックスフォード大学に留学して、旧約聖書の研究をやった。そのときにインテリジェンス関係のイギリスの先生と知り合い、プロパガンダの勉強をした。


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