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2015年5月25日

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宮家邦彦 (みやけ・くにひこ)

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1978年東京大学法学部卒業後、外務省入省。日米安全保障条約課長、在中国大使館公使などを歴任し、2005年退職。総理公邸連絡調整官などを歴任し、09年より現職。

 これら3つのキーワードが体現される兆しともいえるのが先般の安倍首相訪米だった。特に首相議会演説前後のワシントンにおける日本官民による一連の情報発信は極めて効果的だった。

 今後、最も重要なことは人材の育成だ。上記の「3つの肝」を踏まえつつ、日本の政策・魅力を流暢な外国語で発信し、国際会議でアピールできる日本人が今一体何人いるだろう。人材の育成や欧米における好意的研究者ネットワークの構築という点では、残念ながら中韓の方がはるかに戦略的だ。

中韓広報戦略の限界

 つい最近日本がパブリック・ディプロマシーに目覚めるまで、中国・韓国の広報文化外交には勢いがあった。「物量作戦」と「1点集中」の面で彼らの手法は優れていた。特に、第2次安倍内閣を孤立化させ日米を引き離すべく中国が昨年夏まで行っていた反日プロパガンダ攻勢は実に強力だった。

 ところが、結局中国の対日強面外交は失敗する。日米同盟の結束が強化され、フィリピンやベトナムが同調した。結果的に孤立したのは日本ではなく、中国だった。韓国も同様で、朴大統領就任当初こそ奏功していた反日宣伝も、米国内では徐々に「韓国はやり過ぎ」という評価に変わってきた。

 両国とも、官民一体となって、徹底的なネガティブ・キャンペーンを、世論が分裂する日本に対し仕掛け、ある程度成功したことは事実だ。しかし、両国とも大義名分の獲得には失敗したのではないか。このところ日本は一息ついているが、あくまで敵失・オウンゴールによる引き分けに過ぎない。

 夏に戦後70年を迎えるにあたり、安倍首相は新たな談話を発表する方針だ。日本に期待されるのは未来志向の情報発信である。

 日本がアジア太平洋で戦った戦前から、日米が同盟国となった戦後の70年間に、日本は先の大戦を深く反省し、民主国家として再出発し、近隣諸国を大切にし、国際平和に徹し、普遍的価値を主要国と共有してきた。これは日本人の誇りでもある。

 更に、日本はリビジョニスト(歴史修正主義者)どころか、欧米と同じ現状維持勢力として、平和で安定した現行の国際秩序を一貫して護る決意を改めて表明すべきだ。このことを強くアピールすることも、今年の広報文化外交の重要な仕事となるだろう。

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