WEDGE REPORT

2015年5月28日

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倉都康行 (くらつ・やすゆき)

RPテック代表取締役、国際金融評論家

1979年東京大学経済学部卒。東京銀行、バンカース・トラストを経て、チェース・マンハッタン銀行。2001年4月に金融シンクタンクのRPテック株式会社を設立。

 為替市場でドル高への動きが鮮明になってきた。ドル円は7年10カ月ぶりの高値を更新して一時124円を突破するほどに上伸しており、2万円を超えた日経平均にも更なる順風が吹きそうな気配である。年初来、ドル円は120円前後の動きに終始し、上にも下にも動かない膠着状態が続いていたが、今週の相場展開は、その均衡がドル高方向に破られたことを意味している。

7年10カ月ぶりに円安水準になったドル円市場(REUTERS/AFLO)

 ドル高へのモメンタムを刺激したのは、先週末のイエレン議長や、フィッシャー副議長らFRB主流派の口から洩れた利上げに関する発言である。どちらも慎重な言い回しをしながら、年内の利上げの可能性や2018年末に政策金利が3.25〜4.0%まで上昇する見通しなどを示したことで、ドル買いに火が付いた。

 また、これまで低迷気味であった米国の耐久財受注や新築一戸建て住宅販売件数などが復調の兆しを見せたことも、「金利上昇即ちドル買い」というセンチメントを強めたことも一因である。

 さらに、ギリシアが来月に予定されているIMFへの債務支払いが出来なくなるとの観測や、スペインの統一地方選挙で与党が大幅に議席数を減らし、緊縮財政に反対する新興政党が躍進したことで、年末の同国総選挙で与党が敗退するのではないかといった思惑がユーロ売り・ドル買いを誘い、それがドル円にも波及したという面もある。

企業は「四重苦」のなかにあるも 
利上げが近づく米国

 ただし、全面的なドル高の様相を呈している最大の理由は、日本やユーロ圏が量的緩和策を継続している一方で、米国は利上げに近付いているという金融政策の落差である。6月利上げの確率はほぼゼロではあるが、9月あるいは、遅くとも12月には政策金利が0.25%引き上げられる、と米国の短期金融市場は見ている。

 米国経済は年初来、悪天候、港湾スト、ドル高、そして原油安という「四重苦」に見舞われ、利上げは当分先送りといったムードも出ていた。だが、イエレン議長は「経済が見通し通りに動くならば」との条件付きとはいえ、前述したように年内利上げ実施への意気込みを示したことで、市場はドル買いを再開したのである。

 もっとも年初来、ドルはユーロに対して1.04台まで大幅に上昇した後、一気に1.14台まで下落するといった変動を見せていた。必ずしも為替市場に動意が無かった訳ではない。つまり、暫く動きのなかった円への売り圧力が加わったということは、日本サイドにも何らかの「円売り材料」があったと見るべきだろう。

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