2024年4月23日(火)

対談

2015年5月29日

久松:戦後モデルが完成してしまっていたんですね。

小川:完成していたから、30、40年働いてきた幹部連中は、頭を切り替えられないですよね。しかも不動産で収入も上がってしまう。あと10年ちょっと働けば、退職金も貰える。

久松:逃げ切れるぞ、と。

小川:そう。みんな同じ。マクドナルドも従業員を解雇しようとしていますが、有能な人も辞めてしまっていて、残った人の多くは退職金待ち世代だったりするみたいですね。

 アメリカから来た会社なのに藤田マクドナルドには日本的なところがあって、従業員給与はけっこう手厚かったんです。それは高コストではあったけどプラスの面もあって、でも原田改革で一掃されてしまいましたね。こういう時に、優秀な人は去っていってしまう。

「小さくて強い」で本当にいいのか

久松:僕ら以降の世代には中内理論や、その前の松下幸之助の水道哲学なんかが、その時代に夢を与えて、キラキラしていたものだってことが、まったくわからないんです。まだ僕の世代だとかろうじて理解はできる。でも夢のない方法に見えるから、業績が傾けば急速に人が離れるんじゃないかと思ってしまうんですよね。ゼンショーの社長の唱える「牛丼で世界から飢餓をなくす」も、パロディにしか見えないけど本人は本気なんですよね。

小川:全共闘運動で革命に挫折して、牛丼で世界革命を目指したわけですからね。

久松:経済発展の段階の問題で、マクロ状況が変わると、「~哲学」といわれていたものがある一時期にしか成り立たないことが明らかになってしまうということでしょうか。

小川:成り立たないですね。とくに若者がこれからどうするかと迷っているときには、異なるパラダイムを掲げて夢を提示しないと、ついてこないですよ。それが実現できなくなっているということですよね。僕らがアメリカから学んだ経営の理論や手法が、今は通じない。もう期限切れなんですよ。

久松:それを小川先生がおっしゃることの意味は重いですよね。「マクドナルドはちゃんとしたモノを作らなかったからダメになったんだ! やっぱりちゃんとものづくりをしよう!」で片付けるのは簡単だけど、実際にそれでビジネスを回すのは容易なことじゃない。僕の農園は零細企業でしかないけど、それでもフロントランナーとして実質経済を回していかないと未来がない、その責任の重さを最近感じ始めています。上の世代のせいにしているだけじゃなにも変わらない。

小川:久松さんの世代が作っていかなければならないよね。


新着記事

»もっと見る