エネルギー問題を考える

2015年6月1日

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朝野賢司 (あさの・けんじ)

一橋大学特任講師

1974年福岡県生まれ。京都大学大学院にて地球環境学博士号を取得。産業技術総
合研究所バイオマス研究センター特別研究員を経て、2007年より電力中央研究所
社会経済研究所主任研究員。2015年4月より現職(兼任)。著書に『再生可能エネルギー政策論 買収制度の落とし穴』(エネルギーフォーラム社刊)など。

 経済産業省が提示しているエネルギーミックス案の中に、ある重要な政策転換のサインが盛り込まれている。それは2030年における再生可能エネルギー買取総額を3.7~4兆円とするというものだ。原子力発電の停止によって震災前に比べ約3.8兆円燃料費が上昇しているから、原発の再稼働によって浮く燃料費をほぼ全て再エネの買取に充てるということを意味する。
  しかし、現状の固定価格買取制度(FIT)による買取総額は今年度1.8兆円を超えており、3.7~4兆円で落ち着く制度的な担保は何もない。筆者による推計では、太陽光発電の設備認定は、今年3月の1カ月間だけで約1600万kWもの駆け込みが行われ、累計約1億kWに達している。仮にこの9割が運転開始になった場合、再エネ買取総額は4.8兆円となり、目標から1兆円も跳ね上がる。
  これを契機に再エネを少ない費用で多く入れるという効率性の観点に立ち返ることが重要である。莫大な太陽光の既認定分のうち8割が運転開始に至っていないから、これらの買取価格を切り下げてもよいし、年間導入量に上限を設け入札等の競争原理を導入してもよい。既に認定されてしまった莫大な太陽光は再エネの中で極めて割高であり、ここに投じる国民負担を他の再エネや、コスト低下が見込まれる将来の太陽光に振り向けるほうが、「再エネを最大限導入する」という政策目標にもかなう。現行のFITによる太陽光買取の早急な停止が必要だ。

(画像:istock)

事実上、上限がはめられた太陽光発電

 4月28日の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会長期エネルギー需給見通し小委員会(以下、見通し小委)において、2030年時点で再エネ比率を22~24%とするエネルギーミックス(電力構成比)案が公表された。最大の論点の一つは、どのように太陽光発電の導入と費用負担のバランスをとるのか、より端的に言えば太陽光バブルをいかに収束させるのかであった。

 これは2012年7月から実施されている固定価格買取制度(以下、FIT)において、欧州FIT先行国と比べて2~3倍以上も割高な買取価格のもとで、爆発的な導入が進み、費用負担の抑制が大きな課題になっているためだ。

 そもそもFITとは、再生可能エネルギーによる電力供給を、20年間等の長期に「固定」した価格で、政府が電力会社に買い取りを義務づける制度である。FITに要する費用は賦課金として電気料金に上乗せされ、一般家庭を含めた電力需要家が負担する。現行の導入ペースが継続する場合、太陽光の2030年時点の累積導入設備容量は、2015年2月末時点の導入量である2131万kWの8倍にあたる1億4000万kWに達することが示されており[1]、その買取総額を筆者が試算すると2030年度に6.1兆円に達する[2]。これは今年度の買取総額1.8兆円(標準世帯年額5688円)の3倍以上の規模である。

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