サイバー空間の権力論

2015年6月17日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 動画は他愛もない学生の日常や面白さを追求したものの他、カップル同士のイチャイチャした姿やキス動画などを投稿するユーザーもいる。ミックスチャンネルの特徴である細部に至る動画編集機能や画像加工などのサービスを駆使し、レベルの高い動画を作成する中高生が多く、それらの動画は多くの「Like」ボタンやコメントが寄せられる(ネット上に残るにもかかわらずキス動画をアップすることや、そもそも恥の感覚がないのか、といったことについては多くの意見があるが、本稿では言及しないことを予め断っておく)。

アプリ設計が最大の売り

 なぜ中高生世代にミックスチャンネルが人気なのだろうか。動画共有アプリはミックスチャンネルに限定されず、アメリカでは2013年にサービスを開始後、またたく間に人気となった6秒動画共有アプリ「Vine」など、既存サービス等が好調だ。一日の再生回数は15億回を超え、ウェブとアプリを合わせた月のユニークユーザーも1億人を抱え日本展開にも力を入れるVineだが、ミックスチャンネルの開発者によれば、両者には大きな設計上の差異があるという(http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1505/15/news008.html)。

 それによれば、Vineは基本一発撮りが中心で加工が難しく、コミュニティ内の友人等を対象にした投稿も多いという(ユーザー数の上昇に伴い、Vine発で話題となる動画も多いが、設計的には友人や好きなユーザーを対象としている)。対するミックスチャンネルは、動画加工によってより自由度の高い動画作成を可能にし、もともとの友人だけでなく、ゼロからユーザーを増やして動画を軸としたコミュニティの形成が可能となる。

 ミックスチャンネルではLikeボタンやコメントの量などから、最も見られている動画をトップに配置するなど、動画の人気を可視化する設計にその特徴がある。すなわち、すでに形成された友人たちとのコミュニケーションを楽しむだけでなく、ミックスチャンネルは動画の人気を競い、そこから新しいコミュニティを形成し、そこで承認を得ることが可能なSNSである。実際、カップルが出会った当初から動画を投稿し、最後は別れたことを報告する動画を投稿すると、ずっと動画を閲覧してきた多くのファンから別れを惜しむコメントが寄せられている、といったことはよくある光景だ。

 こうしたことからもわかる通り、ミックスチャンネルには凝った動画を投稿することで他者からの承認を得たり、動画を中心にしたコミュニティの形成が可能だ。こうした目的のためにも、多くの若者が日々スマートフォンで動画や画像の編集をしている。それは上述の開発者も述べる通り、一昔前ではオタク的な行為とも言われていたが、むしろそれとは反対のいわゆる「イケてる」層がミックスチャンネルのユーザーなのである。

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