サイバー空間の権力論

2015年6月17日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 なぜこうした「イケてる」(あるいは、いわゆる「リア充」)動画に「ウザイ」や「キモイ」といったネガティブなコメントが少なく、巷で溢れる炎上が生じないのか、と思う読者もいるだろう。実はミックスチャンネルのユーザーの8割は女性、つまりほぼ女子中高生で構成されており、アプリ内のアンケートでは彼氏がいる率が6割以上だ(http://news.mynavi.jp/articles/2015/05/22/mixchannel/)。要するに、自分もイケてる層orそうなりたいと思うユーザーが大半であり、故にそうした動画に抵抗がないどころか憧れをもっていると推測される。逆に学生生活にコンプレックスを抱える層はそもそもアプリを利用していないというわけだ。

Facebook、twitter…SNSの使い分け

 こうした現象はどう捉えられるか。一言で言えば、ユーザーがSNSごとの使い分けをしているということだ。厳密には区別が難しい部分もあるが、SNSにもFacebookなどの現実のコミュニティを対象としたものや、ミックスチャンネルのような、目立つことでネット上の他者から人気を獲得するタイプのSNSなどの区分がある。

画像:gettyimages

 若者は多くのSNSを使い分けている。よく知られているように、Twitterでは公開アカウントと非公開(鍵)アカウントなど複数にわけて、愚痴だけをtweetするものや、少人数だけのやりとり専用のアカウントがあった。しかし後者は現在ではLineのグループトークがその位置を占めつつある。

 一方、2010年のサービス開始以降あっという間にユーザー数が激増し、昨年は月間アクティブユーザーが3億人とTwitterを上回った画像共有アプリの「インスタグラム(Instagram)」がある。モデル等が「良い雰囲気」の画像を投稿することも人気の一因となったインスタグラムでは、ユーザーは現実生活以上の日常を見せようと写真の質にこだわる。さらにそのインスタグラムを2012年に10億ドルで買収したFacebookでは、現実とそれほど相違ないコミュニケーションを取る。

 SNSといっても、制度設計やその用途などの多様化が進んでいる。そこでユーザーは、SNSの設計にあった利用法を試みているのではないか。上述の通り、SNSごとに見せたい自分の一面を多く投稿する。一方のSNSではかっこ良く写った自分の姿を見せ、他方においてはネガティブな自分の姿を晒し続ける。このようにSNSの多様化に伴い、ユーザーもまたSNSごとのキャラ分けを行う。とりわけ若者にその傾向が多いように筆者は感じている。

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