2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月23日

 米国は今南シナ海における中国の行動に対応しなければならないという、困った立場に立たされている。米政府は南シナ海でより強い態度を取ることに決めたのかもしれない。中国が米国のことをより真剣に考慮ことを希望するが、もし中国が米国の決意を試そうとするなら、米国は軍事力の行使の準備もすべきである、と論じています。

出典:Felix K. Chang,‘Is America about to Get Tough in the South China Sea?’(National Interest, May 16, 2015)
http://nationalinterest.org/feature/america-about-get-tough-the-south-china-sea-12901

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 カーター国防長官が、南シナ海の航行の自由を保障するため、米船舶と航空機を送る選択肢を要請したことを根拠に、南シナ海での中国の行動に対し生ぬるい態度しか示さなかった米国の政策が変わるかもしれない、と言っている論説です。

 重要なことは、米国が、南シナ海でのこれ以上の中国の勝手な振る舞いは許せないと判断し、それに基づいた行動を取るかどうかです。米国は、中国が建設した人工島近辺にP-8「ポセイドン」哨戒機や沿海域戦闘艦を送っています。カーター長官の要請通り、12海里以内に立ち入るかどうか、また、米軍の航空機と艦船を今後も継続的に派遣し続けるかどうかが、次の焦点と言えるでしょう。

 これは、オバマの決断にかかっています。オバマは長らく中国との関与を優先しようとしてきました。しかし、中国の行動はオバマの期待を裏切るものでした。「アジア回帰」を標榜する一方で対中関与を重視してきたオバマの姿勢が、中国を増長させた一因になっていると思われます。

 6月12日付本欄でも紹介した通り、最近、米国の対中国関与政策を支持する対中協調派の中心人物であった中国専門家ピルズベリーが、自らの著書の中で「自分の対中認識は間違っていた。中国に騙されていた」と述べ、評判になっています。このような対中認識の変化は、米国の官民を問わずに見られ、今後広がり、強まっていくものと思われます。それは米国の対中政策の変化をもたらさざるを得ないでしょう。

 ASEAN関連の会議や、シャングリラ対話(アジア安保会議)といった、アジア太平洋の国際会議だけでなく、6月のG7でも、南シナ海問題、航行の自由に大きな焦点が当てられました。南シナ海をめぐる情勢は、曲がり角にさしかかっていると言えそうです。

  
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