2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2015年7月2日

印刷、書店も試行錯誤する

 印刷大手も電子書籍に積極的に取り組んでいる。08年以降に丸善やジュンク堂書店といった大手の本屋をM&A(企業の合併・買収)によりグループ傘下に入れてきた大日本印刷は、紙も電子も買えるハイブリッド型総合書店サービスを目指そうとしている。グループの書店やネットストアで本を買うと電子書籍用優待クーポンを提供するなどして、デジタル(電子書籍)とリアル(紙)の区別なく本をより多くの人に読んでもらおうという作戦だ。

 これを実現するため大日本印刷はトゥ・ディファクトという会社を10年に設立、紙の本、電子書籍を買うとポイントがたまりさまざまなサービスの提供が受けられる「honto」会員の登録数が5月に280万人を突破した。

 加藤嘉則トゥ・ディファクト社長は「18年までにはこれを1000万人にまで増やしたい」と話し、デジタルとリアルの両方の店舗を持っている強みを生かそうとしている。さらに今年4月には紀伊国屋書店と合弁で出版流通イノベーションジャパンという会社を設立、デジタルとリアルの両面でアマゾンにはない流通サービスを構築しようとしている。

 凸版印刷は電子書籍の市場をつかもうと新会社Bookliveを11年に設立、レンタルショップのTSUTAYAと資本提携し、顧客に関するデータを活用しながら会員数を増やそうとしている。

 95年からパソコンを使って電子書籍配信サービスを始めたパピレスは、07年から電子書籍のレンタルサービスを開始、昨年6月からは雑誌や実用書の中から好きな記事だけを40円~60円で読める独自のサービスも始めた。コミックでは読み始めると自動的にコミックが動き出す次世代コンテンツ「コミックシアター」もスタートさせ、コミック層を取り込もうとしている。

 各社は電子書籍の利便性を知ってもらおうと新しいサービスを次々と提供しているが、いずれも試行錯誤の段階。電子書籍を出版する29社が加盟している日本電子書籍出版社協会の吉澤新一事務局長は「電子書籍はプロモーション、マーケティングの手法がまだ確立していない。世の中に認められるためには、例えば読み上げソフトが使えるなど、電子書籍ならではのものが必要ではないか」と指摘する。電子書籍にブレークスルーが起きるためには、さらなる工夫と努力が求められている。

  
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