2024年4月26日(金)

Wedge REPORT

2015年6月26日

 協定書の設計もそうだったが、大阪市の廃止と特別区の設置という、行政改革のテーマに矮小化してしまった。

 改革だから、当然個別に不満はたくさん出てくる。それを内包しつつ、でも前に進めるような夢の部分、都市再生戦略が弱かったのが敗因だろう。

(注)横軸「規模」は、人口、製造品出荷額、従業員数などの指標を偏差値化したもの。縦軸「中枢性」は、昼夜間人口比率、上場企業本社数、研究機関数などの指標を偏差値かしたもの
(出所)“大都市”にふさわしい行財政制度のあり方についての報告書」(“大都市”にふさわしい行財政制度のあり方についての懇話会、2009年3月)
拡大画像表示

編:大阪都構想で、限界が来ている日本の大都市制度を改革しようという考えでした

佐々木:日本の大都市制度は明治以来、「3度の挫折」を味わっている。3度目は、「幻の特別市」で、戦後、地方自治法に強い権限を与える特別市制度が盛り込まれたのに、都道府県の反発で実現しなかったというものだ。この結果、妥協の産物として生まれたのが、「大都市に関する特例」である。

 これで横浜、名古屋、京都、大阪、神戸の5大市は政令指定都市となったが、法律上は特例でしかない。都道府県の業務を話し合いで政令市に移管している。結局7~8割移しているが、税源は移さずに負担金として県が払う。金を出すということは口も出す。

 世界中で、大都市が稼ぐ時代に入っている。日本の大都市も上海やシンガポールと戦っていかなければいけないのに、大都市が自由に活動し、都市外交ができる仕組みになっていない。

 その背景には、都道府県制度が限界に来ていることがある。これだけ交通が発達したのに、創設から125年経った府県の枠組みにどれだけの意味があるだろうか。

 官選だった知事は、戦後に公選になったが、2000年の分権改革までは機関委任事務制度によって府県は国の出先機関と化していた。府県の業務の8割は、国務大臣の下請けで、県議会には審議権がなく、予算の減額修正も条例制定も認められていなかった。執行をチェックしているだけだから議会も活性化しない。さらにそういう県の業務を移管したのが政令市の業務なのだ。市町村が文書を出す相手はあくまで府県で、市町村は国に直接反乱してこない。47の都道府県と、府県に抑え込まれた政令市という構造は国にとって都合がいい。

 これ以上、小手先の大都市特例を積み重ねてはいけない。府県を廃止し、道州制へ移行する。そして、大都市を州内中核都市と明確に位置付ける新たな大都市制度を構想すべきだ。その一歩目が、大阪都構想だった。大阪市は政令市の中でも大都市として突出しており(図参照)、大阪を東京と並ぶ都に位置付けられれば突破口になる。


新着記事

»もっと見る