学びなおしのリスク論

2015年6月24日

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漆原次郎 (うるしはら・じろう)

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、科学技術関連の記事を寄稿。早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラム修了。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』『日産驚異の会議』『宇宙飛行士になるには』など。

 人工知能はいま、つぎつぎと私たちの社会のなかに進出しはじめている。

 スマートフォンに「最高の携帯電話は?」と聞けば、人工知能が「その答はご存知のはずですよ」と答えてくる。通信社の300ワードほどの短い記事を人工知能が執筆する。大学入試の小論文を人工知能が採点する。これらのことが世の中ではもう始まっている。

 クイズ番組や将棋などではたびたび人工知能が人間を打ち負かすようになった。今後は、人がしている職業をつぎつぎと人工知能がするようになるともいわれている。では、その先の未来は……。

 人工知能が発達する裏側で、「人工知能が人類を滅ぼすことになるかもしれない」というリスクをいう科学者や実業家が現れはじめている。2014年末には、英国の天文学者スティーブン・ホーキングが人工知能について「これまでにない速度で、みずからで発展し、再設計をしていくだろう」「人類を滅ぼすことになるかもしれない」と発言し、大きな話題になった。一昔前は“映画がせいぜい”だった人類滅亡論が現実味を帯びてきたといったら言い過ぎだろうか。

 技術の進歩はとても速いものだ。人びとの知らぬ間に人工知能が人間の管理しうる範囲を超えて暴走し、人類を破滅させていくというリスクはないのだろうか……。

 人工知能の発達が話題となっているいま、このようなリスクを考えておくことは無駄ではない気がする。そこで「人工知能が人類を滅ぼすリスクはあるのか」という疑問を、率直に人工知能の研究者にぶつけてみることにした。

 応じてくれたのは、東京大学大学院工学系研究科の松尾豊氏だ。松尾氏は、人工知能の研究を専門のひとつとしており、高度な人工知能技術を用いて大きなブレークスルーを生み出すことも目指している。その一方で人工知能学会が2014年に設置した「倫理委員会」の委員長をつとめ、人間と人工知能の関わりあい方などを、研究者だけでなく市民も含めて議論しようとしている。

松尾豊氏。東京大学大学院工学系研究科准教授。2002年、東京大学大学院工学研究科電子情報工学専攻博士課程修了。博士(工学)。同年より産業技術総合研究所研究員。2005年よりスタンフォード大学客員研究員。2007年より現職。シンガポール国立大学客員准教授。専門分野は人工知能、ウェブマイニング、ビッグデータ分析など。人工知能学会では、学生編集員、編集委員を経て、2010年から副編集委員長、2012年から編集委員長・理事。2014年より同学会で設置された倫理委員会の委員長をつとめる。著書に『人工知能は人間を超えるのか ディープラーニングの先にあるもの』(角川EPUB選書)、共著書に『東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」』(KADOKAWA)がある。

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