Wedge REPORT

2015年7月3日

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活況の背後で広がる悲観論

 しかし先行きの業況見通しは決して明るいものではない。世界の造船業は「基本的に供給力が過剰」(西村眞司住友重機械工業副社長)な状態にあるうえ、船価(ドル建て)もリーマンショック前の水準まで回復していない。主力のバラ積み貨物船の運賃も中国経済の落ち込みによる世界的な海上荷動きの低迷から低水準を脱し切れていない。総合的な海運運賃指数である「バルチック海運指数」(1985年=1000)もこのところ、600前後と低迷している。これでは「船会社の新造船発注意欲もわかない。今年の受注量は1000万総トンにも届かないのでは」(日本造船工業会関係者)と悲観的な見方が広がっている。

世界地域別竣工量の推移(1950年~2014年)
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 こうした中、日本の造船業はどう生き延びようとしているのか。

 業界の耳目を集めているのが、これまで業界大手をめぐる再編劇の中で蚊帳の外だった三菱重工業の動きだ。同社はこれまで神戸造船所の商船建造から撤退、瀬戸内を中心とした中小造船の相次ぐ買収で業界トップに躍り出た今治造船(愛媛県今治市)との間でLNG(液化天然ガス)船の設計・販売を手掛ける合弁会社「MILNGカンパニー」を設立するなど造船部門の構造改革を進めてきた。さらに、今年10月1日付で、創業のルーツともいえる長崎造船所の香焼工場を切り出して二つの子会社を設立すると発表したのだ。

 三菱重工が100%出資して設立するのはLNGやLPG(液化石油ガス)などを運搬するガス船を中心とした商船建造会社と、大型船体ブロックを専門に製造する会社の2社。同社が造船部門の再建にここまで思い切った対策をとるのは、LNG船と並ぶ高付加価値船として進出した豪華客船建造で船主からのクレームが相次ぎ、工程に不具合が生じて、15年3月期決算で1300億円にも上る特別損失を計上、事業の再建を余儀なくされたためだ。

 これによって長崎造船所は、海上自衛隊向けイージス艦など艦艇の建造に特化し、同時に「エンジニアリング(EPC)事業を強化、将来のメシの種にする」(柳澤順三船舶・海洋事業部長)方針だ。具体的には、大型コンテナ船など他の船種についても開発設計を進め、建造については専業中手に委託、競争力を強化していく。本体は商船建造から撤退することになる。

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