2024年4月19日(金)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2015年7月7日

レアアース会議では何が起こったのか? 
日本代表としてプレゼン

 さて、会議の内容はモリコープの事実上の倒産には触れずにもっぱら中国のレアアース輸出政策の転換情報と中国以外のレアアース鉱山の新規開発の宣伝に終始した。一方、新規のレアアース関連企業は足元のレアアース企業の倒産などはどこ吹く風で自動車産業や風力発電やソーラー発電におけるレアアースの重要性に着目した報告が続くのである。

鉱山をパノラマで撮影

 

 日本を代表して行った私のプレゼン発表は「日本のレアアース産業の市場動向」というタイトルであるが、2010年の尖閣諸島問題から始まったレアアースの高騰とWTO提訴後の国際価格の大暴落の分析と今後の処方箋を報告した。

 発表の骨子は、(1)日本が世界のレアアース需要の半分を占めている市場分析(2)尖閣問題から起こった投機市場の問題点の回顧(3)将来のレアアース産業のあるべき姿と処方箋である。大変お堅い内容であるので多少は面白おかしくアメリカとオーストラリアと中国と日本のお国柄を揶揄する内容にしたが、これが馬鹿に聴衆に受けたので驚いてしまった。

日本には好意的だが、中国には批判的

 会期中にもたびたび感じたのだが、なぜか日本に対して、参加者は好意的で中国に対しては批判的な意見が多かったのである。日本政府が尖閣諸島の問題と中国のレアアースの輸出禁止について2010年以来、国際社会に対して根気強くアピールしてきたことが奏功したとの見方もある。

レアアースを含む鉱石

 確かに私自身も国際会議に呼ばれて日本の立場を説明したり、海外メディアの取材を受けたりした事実もあるが、世界の風評がこれほどまでに日本に好意的だとは意外であった。世界の論調は急激に拡大してきた中国経済に対する「苛立ち」を感じていたのかもしれない。逆に日本経済の凋落を同情されたという人もいる。

 それにしても世界の風評においては日本びいきが多いのである。私は個人的には中国が2010年にレアアースの輸出を止めたことには確かに「違和感」を感じたが、中国にもそうせざるを得なかった内部事情も知っていた。私自身は「日本人特有の自虐史観」には真っ向から反対する立場にいるが、それでも日本人の好きな「素直な姿勢」は大事にする方だ。

尖閣問題から組まれたレアアース開発補正予算 
500億円はどこへ?

 当時、日本政府がレアアースの資源開発のために500億円の緊急予算をとったことには驚いたが、だからといって日本政府が国民の税金からオーストラリアの鉱山利権を取得して良いとは思わなかった。

 一方、住友商事がモリコープと投融資交渉をした結果、幸か不幸か米国のレアアース資源を取得できなかったが、これも欲の皮の突っ張ったモリコープの旧経営陣の判断であったはずだ。また、トヨタグループがベトナムやインドのレアアース利権を漁ったことも何となく「失敗する」と感じていた。


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